社会正義メッセージをマーケティングに利用したナイキの例のCMについて

ナイキの例のCMについてTwitterでつぶやいたことをまとめておきます。2020年12月初旬のツイートです。


www.youtube.com


ナイキのCMに肯定的な人と否定的な人の違い、国内だけを見てるか、世界的な視点で見てるかの違いじゃないかな。国内だけを見てれば、マイノリティ差別ってよくないよね、で完結する。しかし、世界的に見れば日本人はマイノリティです。左翼の言葉でいえばPoC (people of colour)です。


ナイキというマルチナショナル企業が、世界のほぼどこからでもアクセスできるYoutubeというプラットフォームで、マイノリティ(日本人)を雑に悪役にした動画を公開した。マイノリティを悪役にする場合は、同じマイノリティの善玉も登場させるという最低限の配慮すらせずに。


海外で暮らす日本人の子供がこの動画のせいで嫌な目にあったらどうするの、と思う人もいたかもしれない。マイノリティも声をあげていこうという趣旨のこの動画に賛同する人こそ、この動画に否定的な人を否定できないのではないか。


ナイキはトップ・アスリートと契約して、自社ブランドを彼らと関連付けることでブランド・イメージを高めるというプロモーションをアグレッシブにやってきたわけだけど、今回はアスリートの代わりに社会正義ステートメントを利用した。これはアメリカでは既に行っている手法(カパニックの件など)。


スポーツ選手なら、芸能人や有名人にブランドを関連付けるプロモーションはどこの会社もやっているし、一流アスリートってかっこいいよね、で済む話なのだが、今回は非常に複雑な社会問題を単純な勧善懲悪的ストーリーに落とし込み、情緒を煽り、少なくとも大きな話題を作ることに成功した。


社会問題を単純化して感情を煽り、自ブランドのイメージアップに使うという手法の是非はもっと論じられてもいいと思う。今回の件については、私はナイキの行為は無責任だったと思います。


この動画によって、差別に関する議論が深まったとナイキは考えているかもしれないが、それは違うと思う。下のスクショのように左派の言論人は、この動画に批判的な人を差別主義者または意識の低い人と決めつける。この動画は、議論ではなく分断を深めるために使われた。

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あとやはり、朝鮮学校の生徒を登場させたのは (ご本人の問題ではないにせよ)、リサーチ不足だったのではないか。「じゃあ、横田めぐみさんなど、未来を北朝鮮に奪われた拉致被害者のことはどう思っているんだ」みたいなことはどうしても言いたくなる。


「今回のCMに文句を言っている人をナイキは相手にしていない」と言う人もいるが、これはたぶん正解。ナイキが対象にしているのは、一流選手がCMに出てるからナイキを買おう思う人たち、そして、どんなに薄っぺらなやり方でも「ナイキが社会問題に切り込んだ 、かっこいい」と思える人たちだから。


ウイグルでの強制労働にナイキが関与している可能性が高いことは積極的に語っていきたいと思う。ウイグルで起きている件はほんとうにひどい話だし、間接的にはナイキの偽善性を暴くことにつながる。

www.sankei.com


あと、ナイキとオニツカ (アシックス) との大昔の悶着って、今回あんまり語られなかったですね。実際に何がどうだったのかはもちろん私も知りませんが、アシックス創業者の鬼塚さんはそうとう苦い想いを抱えていたようです。

otokomaeken.com


それから、「声高に社会正義を叫ぶ欧米人」のうさんくささって、ある程度日本人の中で共有されているのでは? と思うんだけど。 特に、反捕鯨団体が、人種差別的感情の合法的なはけ口を善良な欧米市民の皆さんに提供して、寄付金集めをしていたころを覚えている人たちの間では。。。


ナイキが社会正義をマーケティングに利用しながらも、自らの行いについては頬っ被りをしていることを批判するアイリッシュタイムズの記事。「ナイキ。アメリカでは目覚めている(意識が高い)が、それ以外の場所での人権問題についてはタヌキ寝入りをしている」 (注: この記事は日本でのCMに触れているわけではありませんが、米国では意識高い系のマーケティングを行いながらも、ウィグルでの強制労働には無頓着など、ナイキの偽善性を指摘する記事です)

www.irishtimes.com



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