tarafuku10 の作業場

たらふくてんのさぎょうば

高市早苗総裁選勝利についてのデイビッド・マクニールのとんちんかんな記事

10月6日のアイリッシュ・タイムズに、デイビッド・マクニールが高市早苗の総裁選勝利に関する記事を書いていました。事実としての間違いもあるし、日本の政治状況を真剣に追っているのか疑問を感じさせる記述もあったので、このブログ記事で問題点を指摘したいと思います。[魚拓]

 

(1)

The LDP’s coalition partner, the Buddhist-backed Komeito, has hinted it might desert the government if Takaichi does not rein in her more extreme positions. That would leave the party scrambling for help, probably with Sanseito.  

 

まず、「公明党が連立離脱をほのめかしているので、おそらくは参政党に助けを求めることになるだろう」と書いているのですが、これは日本の政局を追いかけていればありえない考察です。なぜなら参政党は衆議院で3議席しか持っていないので、意味のある助けを自民党に提供することはできないからです。私がこの記事を書いている時点で公明党が離脱を表明しましたが、参政党は当然のことながらほとんど話題にもなっていません。マクニールはここで維新にも国民民主にも言及していません。この2つの党は衆院で参政党より多くの議席を持ち、連立または政策協力の現実的な可能性があるにもかかわらずです。今年7月の参院選で参政党が躍進したので、衆院でもかなりの議席を持っていると勘違いしたのかもしれません。この記事の別の個所では、「7月のgeneral electionで参政党は14議席を得た」とも書いているので、マクニールは7月の参院選が衆議院選挙だったと勘違いしているのかもしれません (general electionは通常は衆議院選挙にしか使わない)。

 

マクニールは今年8月にアイリッシュタイムズに書いた記事でも、今年7月の参院選で参政党の神谷が当選したと間違えていました (神谷は3年前に当選して今回は非改選)。[魚拓]

 

(2)

In common with her protege, Shinzo Abe, who was assassinated in 2022,

 

「彼女の弟子 (protege) である安倍晋三と同様に...」と書いているが、これは単純に間違い。安倍晋三の弟子が高市です。

 

(3)

In a speech launching her bid to lead the ruling Liberal Democratic Party (LDP) last month, Sanae Takaichi accused tourists of “kicking” the deer.

(中略)

Media commentators said Takaichi (64) was pandering to xenophobia. Reporters dispatched to Nara to probe her claims could not substantiate them. Workers in Nara Park said they had not seen anyone harming the deer.

Some speculated that Takaichi was triggered by a notorious YouTuber who had built an online career falsely accusing Chinese tourists of bullying the animals.

 

 

また、高市が総裁選出馬会見で奈良の鹿を外国人がいじめているという話をしたことにマクニールは触れ、日本にはびこる外国人嫌いの感情におもねるものだと書いています。彼はここでも重要な事実を省くことで、高市が思慮の浅い極右であるような印象を読者に与えています。

 

まず、高市の選挙区が奈良であるという事実が書かれていません。高市が自分の出発点である生まれ故郷の話からスピーチを始めたというのと、ネット上に流布する噂話に踊らされたというのでは、まったく印象が違うでしょう。当然のことながら、高市は地元の人からも鹿に関する話を直接聞いているでしょう。

 

また、外国人が鹿に乱暴しているという主張に根拠は見つからないという話をマクニールはしているのですが、去年の7月に大阪の毎日放送 (MBS) が、警察官が奈良の公園で「鹿を蹴らないで」というアナウンスを英語と中国語で行っているというニュースを流しています。少なくとも公式に警察官が外国語で注意喚起をしなければならないほどには日本語を話さない人々による鹿の虐待が行われていたということになります。

 

さらに、高市は悪名高いYoutuberの嘘の主張を真に受けたのだと推測する人もいる、とマクニールは書くのですが、この「悪名高いYoutuber」とは間違いなくへずまりゅうのことでしょう。しかし、へずまりゅうが民主的に選挙で選ばれた奈良市会議員であることにはマクニールは触れていません。彼がこの事実を知らなかったのか、高市が迷惑系Youtuberの戯言を信じるような頭の悪い人間だと印象付けたくてわざと省いたのかはわかりません。

 

(4)

[魚拓]

さらにマクニールは、ほとんどの一般庶民にとっては1955年の結党以来の自民党のDNAである保守的イデオロギーよりも毎日の暮らしにかかわる問題の方が重要である、と書いているのですが、そんなのはマクニール以外の人にとってはずっと前からわかりきった話です。高市が経済を軽視していたという事実はありません。緊縮財政派か積極財政派かは総裁選のみならず最近の政策論争の大きな争点であり、高市は積極財政派の期待の星となっていました。

 

「保守思想に拘泥する高市」などというものはマクニールの頭の中にしか存在しないのです。といいますか、さまざまな経済対策を打ち、そのすべてが成功したとは言えないかもしれませんがかなりの経済成果を残した安倍元首相を、主にその保守的思想の点から叩いていたのがマクニールなのです。経済の知識が弱いのでイデオロギー的な話で恰好をつけるしかなかったのかもしれませんが、そんな彼が今になって高市の経済政策が弱いと思い込み、それをあげつらうのには失笑を禁じえません。

 

もう1つ言えば、欧米でのポピュリズム政党の台頭でもわかるように、近年では経済的な対立軸だけにとどまらず、社会文化的な対立軸 (移民問題など) も大きな政治的論点として浮かび上がっています。どちらの論点にも目配りすることは、今日の政治家として当然のことでしょう。

 

結論

結局のところ、マクニールの優先事項は高市に極右のイメージをつけることなので、こういう薄っぺらで一面的な記事になってしまうのでしょう。日本の政治をまじめに追いかけてる人から見たら噴飯ものです。たとえば、こちらのブルームズバーグのガロウド・リーディー (この人もアイルランド人) の記事と比べたら雲泥の差です。