中国が新型コロナウイルスに関連して非常に否定的な論調で語られている - 英国のポッドキャスト番組から

ちょっと古い話になってしまうのだが、先月、新型コロナウイルス関連のポッドキャスト動画をYouTubeで見ていた。その中で、識者 (学者やジャーナリスト) が中国に対して非常に否定的な見解をあからさまに述べる動画がいくつもあったので3つほどご紹介します。


地上波や新聞などのメインストリーム・メディアでは、ここまではっきりと中国に否定的な論調が出てくることは (私の見る限り) あまりない。


まず、UnHerdという英国のオンライン・マガジンのポッドキャスト。インタビューに答えるのは、ニール・ファーガソン (Niall Ferguson) という英国出身で米国在住の歴史学者。政治的には保守。コロナウイルス感染症について英国政府に助言した公衆衛生研究者のニール・ファーガソン (Neil Ferguson) とは別人。5/20公開の動画。


www.youtube.com


25:07 あたりから。「アメリカは終わりだとか、これからはアジアの世紀だとかいう文章が毎日のようにリリースされる。しかし、こうした記事は結論を急ぎすぎている。中国で作られたウイルスによって非常に深刻な制度上の問題が発生したが、それを見ていないからだ。今年の中国の経済成長は彼らの予想を大きく下回るだろう。こうした衝撃を受けて、安定した体制が保たれるかどうかはわからない」


次は、TRIGGERnometry。デビッド・マクウイリアムズというアイルランド人経済学者がインタビューに答えている。この人はメディアにもよく登場するので、アイルランドでは知らない人がいないと言っていいほどの有名人。政治的には中道左派と自分で言っている。5月6日公開の動画。


www.youtube.com


動画の35分ぐらいから45分すぎぐらいまで、マクウイリアムスはサプライチェーンの一方の端を中国に置くことのリスクに欧米の国々や企業が気付いてしまった、という話をしている。


(37:43)「長期的な視点で新型コロナが中国に与える影響を考えた場合、UK、ドイツ、フランス、米国などどの国も、基本的な装備を中国に頼ることは今後はけっしてしないだろう」


最後もTRIGGERnometryから。ゲストは英国人ジャーナリストのダグラス・マレー(以下DM)。彼が中国について話しているところをざっと翻訳してみた。46:25ぐらいから。司会はコンスタンティン・キシン(KK)とフランシス・フォスター(FF)。2人とも英国のコメディアン。


www.youtube.com


(翻訳ここから)

FF: 中国の話をしよう。コロナの件、中国というか中国共産党(CCP)はどのくらい責任を負うべきと思うか?


DM: 市場からか研究所からか、事故なのか故意なのか、どのシナリオでもCCPはその責任をとらないといけない。ウイルスが中国で発生したからだけでなく、何か月にもわたって世界を騙したからだ。そして、全体主義政権がいつもやることを行った。つまり、現地の災害を世界的なものに変えたのだ。世界経済を焼き尽くした中国の政権との関係を見直すためのとても複雑だが必要なプロセスが私たちを待っている。


KK: 賠償金が必要だと思うか?


DM: もちろん、あらゆる可能性を排除せずに検討すべきだ。私たちの同盟国や友好国はCCPにひどい扱いを受けている。中国は豪州政府をいじめている。


KK: この件はあまり知られていない。


DM: 過去にも書いたが、UKはCCPについてあまりにも考えが甘かった。おそらく金(きん)の蛇口としか見ていなかった。


この話は7年前に信頼できる筋から聞いたんだが、キャメロン首相(当時)がダライ・ラマと会談した後、CCPはUKとの新しい投資に関する貿易関係を打ち切った。キャメロンがダライ・ラマと距離を取る、二度と会わないとアナウンスし、ひどくこびへつらった謝罪を表明した後、UKの代表団が北京を訪れた。


中国代表団はテーブルの向こうから英国政府の謝罪文のコピーをUK代表団に渡し、立ち上がって読むようにと言った。で、UK代表団は言われたとおりにした。着席するとCCPの担当者は笑顔を浮かべ、本気かどうか知りたかったんだ、と言った。


KK: わお。


DM: この話を聞いたとき、私、というか英国民を代表して、それほど卑屈になるヤツがいるのかとひどく驚いたのだが、しかし、私たちは我慢することを選んだのだ。金や投資が欲しければ(金や投資が重要でないとは言わないが)、彼らのルールでプレイしなければいけないと。


ここ数週間、オーストラリア政府は同様の体験をしている。これは強調しておきたいが、UKがいま学んでいることを、彼らはUKより先に、より速いスピードで学んでいる。それは、地理的に近いことと、ここ数十年の貿易関係から。豪州を訪れたときに感じたが、一般の豪州人は、中国との関係には何かが付随してくるという事実を、英国人や米国人よりはるかに意識している。2~3週間前、豪州政府は、ウイルスがどこで発生してどう広まったかについて、独立した国際的な公式調査を行ってはどうかと示唆した。豪州政府がそう示唆した後、CCPはいつもと同じような反応を示した。豪州を脅したのだ。


在豪の中国外交官や大使は、中国は豪州の製品、牛肉、ワインの購入をやめる可能性があると言った。これは人種差別のようだと言った。ある著名な中国政府の御用記者は、「豪州は中国の靴の裏にくっついたチューインガムだ。削り落とさないといけない」とWeiboに投稿した。これは、CCP高官の典型的なものの言い方だ。


KK: それこそレイシストのように聞こえるね。


DM: おもしろいことに、ナンシー・ペロシやその仲間たちは、ウイルスがどこで発生したか言うのは人種差別なのではないかと心配していた。2月の終わりか3月のはじめになっても、連帯を示すために地元のチャイナタウンに行くことをペロシは奨励していた。フィレンチェ市長は、中国人を見つけてハグしようと市民に呼び掛けていた。レイシズムとコロナウイルスを同時に撃退するためにだ。それが、フィレンチェがどこよりも早くロックダウンに入った理由かもしれない。


ウイルスが中国から来たと言うことが人種差別かどうかを私たちが懸念しているというのに、中国は世界のあらゆる人に対して好きなだけレイシストとしてふるまう。これこそ、私たちの愚かさが現実にぶちあたった典型的な例だ。現実の中国は、レイシズムのことなどこれっぽちも気にしない。しかし、私たちが気にすることを彼らは知っている。そして、私たちについて何でも好きなことを言い、私たちの恐怖を巧みに操る。


話を戻すと、豪州は中国に製品をボイコットされようとしている。よくも中国に歯向かったな、よくもウイルスの起源について独立した国際的な調査を行うことを示唆したな。そんなことをしたらどうなるか教えてやる、というわけだ。今こそ連帯のときだ。ニュージーランドが私たちの友人で同盟国の豪州の支持を表明したことを嬉しく思う。


今こそ民主的な連帯のときだと思うし、私たちの同盟国をいじめておいて、私たちがその同盟国から距離を置くなどと思うなよ、とCCPに言うべきときだと思う。コロナウイルス騒動の後、中国についてはすべてをテーブルに載せて検討すべきだと思う。

(翻訳ここまで)

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伊藤詩織氏のBBC『日本の秘められた恥』での発言について(特に「sexual assault」と「everyone」の訳について)

2018年にBBCで放映された『日本の秘められた恥』(原題: Japan’s Secret Shame) という番組が、最近またツイッターなどで議論の的になっている。この番組は、性的暴行を受けた(と主張する)伊藤詩織氏を追ったドキュメンタリーである。


www.bbc.com


議論の的になっているのは、上記のBBCのページに掲載された、上から2番目の動画。この動画で、伊藤氏は英語でこう語る。

If you grow up in Japanese society, everyone have experienced sexual violence, or sexual assault, but not everyone consider it was. Especially when you start using public transportation as a high-school girl. That's when it happens every day. So whenever we go... get to the classroom, that was always the topic: today, this man jerked off on me, today this man cut my skirt. But this was something that we have to deal with. We never reported it.


これに対して、BBCは字幕をこうつけている。

日本社会で育つと誰でも性暴力や性的暴行を経験しているんです
ただし自分が被害に遭ったんだと全員がそう思うわけでもない
特に女子高生として交通機関を使うようになると
そこから毎日そういう目に遭うようになるんです
だから毎朝教室に着くたびにいつもその話題で持ち切りでした
今日はどんな男が自分の上にかけてきたとか
今日は別の男にスカートを切られたとか
でもそういうものだと受け止めるしかなかった
通報なんかしませんでした


この伊藤氏の発言を問題視してツイッター等で抗議の声を上げているのは、shin氏(@shin_shr190506)やSachi氏(@sachihirayama)である。両氏の主張は、私の理解するところによれば、伊藤氏は日本の性被害の状況を、事実に反して、または誇張して表現しており、それによって間違ったイメージを日本人(主に女性)に抱いた外国人が、日本人(主に女性)に実際に性的な害を加える可能性が高まる、というものである。


これに関連して、カツミタカヒロ氏という方がNoteで記事を書いておられた。

note.com


タイトルが「【翻訳検証】BBC Two『Japan's Secret Shame』(2018)の番組で伊藤詩織さんが語ったことが問題視されている点 #JapansSecretShame」であり、問題となっている伊藤氏の発言が冒頭で引用されていたので、Shin氏やSachi氏への反論として書かれた文章かと思って読んでいたのだが、読んでいるうちに、どうやらそういう意図ではないのかもしれないという気もしてきた。


カツミ氏は、最初の段落で「字幕の訳が物議を醸した」(太字は筆者)とはっきりと書いており、詩織氏の英語での発言が主に英国の一般視聴者にどのような影響を与えるかを議論しているShin氏やSachi氏とは、問題意識の持ち方がまったく異なるからである。


カツミ氏は、その後の文章でも、日本語の字幕を付けるとしたら、どのような字幕が最適なのかについて詳しく議論されているので、伊藤氏の発言がSNSで議論になっていることをきっかけとして、その議論とは関係なく、字幕翻訳に関するご自身の知見を披露しようとされただけなのかもしれない。しかし、もしShin氏やSachi氏の議論への反論として書かれたのであれば、問題意識が根本からずれているので、カツミ氏の文章は残念ながら議論としてはかみ合っていない。


そのあたりを疑問として残しつつ、伊藤氏の英語での発言が(主に)イギリスの一般視聴者にどう理解されたのかを日本人に理解していただくにはどう訳せばいいのか、カツミ氏の訳を参考にさせていただきながら考えてみた(私はビジネス翻訳歴25年。母語は日本語。アイルランド在住28年です)。


始める前に、以下の2点についてご留意いただきたい。

(1) カツミ氏も、「筆者が行った原文の修正、再翻訳と再字幕化については賛否両論あるだろう。筆者もさまざまなことを勘案して類推してベストと思える、美しい翻訳を心がけたまでのことなので、批判はあって然りだと思う」と書かれている。一般に、翻訳に「賛否両論ある」「批判はあって然り」というのは私も同感であり、翻訳である以上、元の文章や話者の意図なり情緒なりを翻訳で100%伝えるのはほぼ不可能である。何かを生かすために何かを落とさなければならない場合もあれば、知らず知らずのうちに訳者がなんらかのバイアスをかけてしまう場合もある。今から私が行う翻訳や考察についても、当然、批判はあって然りと考えている。


(2) 私の考察は、「伊藤氏の英語での発言が(主に)イギリスの一般視聴者にどう理解されたのかを日本人に理解していただくにはどう訳すか」が目的であり、カツミ氏の訳は「日本人視聴者向けにどのような字幕が最適か」が目的なので、訳は違って当然である。


では始めます。

(A) 「sexual violence, or sexual assault」の訳について。伊藤氏があえて選択したのかどうかはわからないが、「sexual violence」や「sexual assault」はかなり強い言葉として英国の一般視聴者に受け止められるだろう。であれば、英国の視聴者がどのように受け止めたのかを日本人に説明する目的では、それと同じくらい強い言葉を訳語として選ぶべきである。BBC の字幕は「性暴力」「性的暴行」と言う訳語を選択しているが、英国の一般視聴者が受ける印象もこれに近いものだと私は考える。


英語の「sexual assault」も日本語の「性的暴行」も、辞書的には「望まない身体接触すべて」を指す。したがって、言葉から一般的に受ける印象とは異なるかもしれないが、痴漢も含まれる。詩織氏が、一般的には「痴漢」に対して使われる「groping」ではなく、「sexsual assault」という語感の強い語を使用したのであるから、伊藤氏が英語で何と言ったのかを日本人に伝えるには、同程度の強さを持つ「性的暴行」と訳すのがよいだろう。


カツミ氏は「長年に及ぶ筆者の人権界での経験と、様々なメディアや専門家による文献などに直接接してきたことから得られる結論」として「一般に国際社会においては”sexual assault”と認識されている暴力であり、対する正規訳は「性的加害」であると理解している」と書いておられる。そして、「sexual violence, or sexual assault」をまとめて「性的加害」と訳しておられる。人権等の専門家の間では、正規訳が「性的加害」であるのかもしれないが、オーディエンスが一般視聴者であるという事実を考えた場合、「sexual violence, or sexual assault」を「性的加害」という一般になじみのない言葉に訳すのは、英国人一般視聴者がどう感じたのかを日本人に伝える目的では不適切と考える。


(B) 「Everybody」の訳について。BBCの字幕は「誰でも性暴力や性的暴行を経験しているんです」。カツミ氏の訳は「性的加害を見聞きした経験を持つでしょう」で、「everyone」をあえて訳出していない。もちろん「Everybody」が文字どおり「全員」の意味でないことは常識で考えればほとんどの人がわかる。ただ、話している内容についてオーディエンスが認識を共有している場合にくらべて、オーディエンスが認識を共有していない場合は(日本での性暴力について話を聞いている一般英国人視聴者がそうだ)、「Everybody」が文字通りの意味なのか、強調で使われているのか、強調だとすればどの程度の強調なのか、混乱する人の割合は増えるだろう。


インタビューの中で、事実として「Everybody」という言葉は使われた。伊藤氏は性暴行の被害者(少なくともご自身はそう主張している)であると同時に、ジャーナリストでもある。ジャーナリストとしてはこの言葉の選択は精緻さに欠けるだろう。それでもこの言葉を使った。精緻さを犠牲にしてでも強調して感情に訴える方が効果的だと考えたのかもしれないし、単に英語力の問題かもしれない。だが使った事実はまちがいない。「それほど強調したいことであるのだな」と思う人もいれば、「不誠実に話を盛っているな」と受け取る人もいるだろう。それは、「Everybody」を聞いた英国人視聴者でも、「誰もが」を聞いた日本人でも同じだろう。だったら、シンプルに逐語訳で「誰もが」とすればいい話である。


(C) 「experienced」の訳をカツミ氏は「見聞きした経験」と訳されているが、この文脈で「見聞きした」の意に受け取る英国人一般視聴者は非常に少ないのではないか。


(D) 「this man cut my skirt.」の「cut」が「caught」ではないかという指摘。たしかにこれはどちらにも聞こえる。この発言の直前にあるのが「this man jerked off on me」(男に精液をかけられた) というかなりひどい被害について話しているので、それに匹敵する被害ということで「cut」の方が文脈上は可能性が高い気もするが、これはどちらにも聞こえるので意見は差し控えたい。


伊藤氏の英語での発言が(主に)イギリスの一般視聴者にどう理解されたのかを日本人に理解していただくという目的で私が訳すとすれば以下のとおり。基本的にBBCの訳を踏襲している。

日本社会で育つと誰もが性暴力や性的暴行を経験します
ただし自分が被害に遭ったんだと全員が思うわけではない
特に女子高生として交通機関を使うようになると
毎日そういう目に遭うようになります
毎朝教室に着くと、いつもその話をしました
今日はどんな男にかけられたとか
どんな男にスカートを切られたとか
でもそういうものだと受け止めるしかなかった
通報はしませんでした


また、舩田クラーセン・さやか氏という方も「everyone」と「sexual assault」の訳についてカツミ氏と同様の意見をお持ちのようである(ご本人のツイートは見つからなかったので確認していないのだが、ラサール石井氏が日刊ゲンダイに書かれた記事を参照した)。



舩田氏のご意見についても、私の意見はカツミ氏の訳文について書いた上記の文章と同じである。


以上です。


ここからは、BBCの番組を離れての余談となります。


このBBCの番組が放映されたのと同じ頃に、伊藤氏はヨーロッパのほかの番組にもいくつか出演しました。その中の1つ、北欧のトーク番組「Skavlan」(トークは英語で行われる)に出演した伊藤氏を見て、私は当時ツイートした内容を再録します。



(再録ここから)
詩織さんが出演した北欧のトーク番組「Skavlan」を見た。彼女は例によって日本の性を巡る状況が西洋と大きく違うことを印象付けようとする。ここでも刑法の性的同意年齢にのみ言及し、18歳未満との性交を刑事罰化する淫行条例の存在には触れない。この態度はあまりに不誠実。


彼女はまた、日本では女子高生にとって痴漢が日常茶飯事であり、10歳のときにはプールで体を触られたと告白する(もちろん彼女はここで視聴者が驚いてくれることを期待しているはずだ)。しかし、ここで司会者は別のゲストのイギリス人女性作家Jojo Moyesさんに話を振る。


Moyesさんは、自分も不愉快な体験を20回はしたし、話を聞いた女友だちのうち1人を除いて全員が10回以上被害にあっていると語る。夫に話したところ、夫はショックを受けていたと。被害に遭わないためのTo-Doリストがソーシャルメディアで共有されてるとか。


だから、どこの国でもそうだが、イギリスには日本人を珍獣扱いする「Japan's Secret Shame」を制作するErica Jenkinさんのような知的に不誠実な女性もいれば、Jojo Moyesさんのように国境を超えた女性の連帯を模索する誠実な女性もいるということ。


また、詩織さんのストーリーをニュートラル化するためにJojo Moyesさんを同席させて話をさせたのは、スウェーデン/ノルウェーのテレビ製作者とイギリスのテレビ製作者の誠実度の違いを示しているのかもしれない。


あと、日本では子供への性的暴行を「tricked」(いたずら)というぼかした言葉を使うと詩織さんは言っているのだが、英語でも普通に「molest」という単語を使うので、これも日本が特に特殊なわけではない。

(再録ここまで)

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英国の人種平等対策委員会のトップに任命されたミュニラ・マーザ氏

ミネアポリスで黒人男性が警官に殺されたことを受けて、英国でもデモが各地で発生しています。ボリス・ジョンソン首相は人種平等対策委員会の設置を決め、そのトップにはミュニラ・マーザ氏が任命されました。

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彼女は、イングランド北部のオールダム出身。1978年生まれ。父母はパキスタンからの移民です。ジョンソンがロンドン市長だったときに、教育/文化担当市長代理を務めていました。若い頃は共産主義の政党に参加するなど左翼だったのですが、時を経るにつれて政治志向は変化したようです。ブレグジットでは離脱派。また、アイデンティティ・ポリティクスには非常に懐疑的な態度を示しています。


今回の人選には、英国の左派は不満のようで、ガーディアン紙などは癇癪を起こしたかのように批判記事を書いています。

www.theguardian.com


この批判記事に対する学者さんの反応を2つご紹介します。

シンクタンク研究フェローのラキブ・アサン博士: 「(イングランド)北部出身の優秀なパキスタン系ムスリム女性。そして、アイデンティティ主義者には同調しない。現代英国の左派にとっては最悪の悪夢のような存在。だから、こうした記事がガーディアン紙から出てきたことには驚かない」


ロンドン大のエリック・カウフマン教授: 「平等に関する政策を策定するにあたって、科学とエビデンスが批評人種理論にとって代わる可能性に、ガーディアン紙が動揺している」


ガーディアン紙もひどい言われようですね(笑)。


2017年に英国政府が人種不均衡に関する監査報告書を出したとき、ミュニラ・マーザ氏はBBCの時事番組に出演して、短いインタビューに答えています。彼女の考え方がよくわかるので、そのときの発言を翻訳します。

www.youtube.com

(1:43)
司会: あなたは、政治的スペクトラムのあらゆるところで、反人種差別が武器として利用されていると考えている。これは公正な見方か?


マーザ: この種の報告書は、今日の英国で民族集団がどのように暮らしているかについて、ネガティブなイメージを過剰に強調しがちである。これを人種的な不正という観点でとらえることで、不均衡が存在する理由について非常に誤解を招くようなイメージを拡散している。そしてそれは、民族集団内の怒りや恨みに火を注いでいると思う。


司会: 事実を単に述べているのではなく、怒りに火を注いでいる(fuelling)とあなたが考える理由は何か?


マーザ: 彼らが使う言葉は非常に興味深い。首相は「火急(burning)の不正」と言った。肌の色によって異なる扱いを受けていると。しかし、集団間で不均衡や異なる結果が発生する理由はさまざまである。英国のBME(black and minority ethnic: 黒人および少数民族)の半数近くは国外で生まれている事実を考えれば、言語や資格の問題がある。BMEの大多数は労働者階級の出身で貧困地域に住んでいる。このように、さまざまな要因がある。これが制度における不公正な差別によるものだ、または肌の色のせいだと言うことは、非常に誤解を招く言い方だと思う。実際には、いくつかの集団は平均よりも良い結果を出している。教育機関で(少数)民族集団が良い成績を収めているので、現在は白人集団の方が人種的不正に直面しているのだ、などという奇妙なロジックを政府は使い始めている。誰もが恨みを抱くことを奨励されているようだ。


司会: 誰もが恨みを抱くことが奨励されているとあなたは言うのだが、人種に関する差別は公共部門にはまったく存在しないと言っているのか?


マーザ: いや、そうではない。差別はある。この国にレイシズムはある。しかし、レイシズムの度合いや差別の度合いを誇張することは、誰のためにもならないと思う。報告書で示された不均衡のうちいくつかは、民族集団だけでなくすべての集団に影響を与えるさまざまな要因で説明できると思う。刑務所に女性より男性の囚人の方が多いからといって、ジェンダー的不正があるとは言わないだろう。南アジア系のクリケット選手がサッカー選手より多いからといって、人種的不正があるとは言わないだろう。こうした不条理なロジックは、社会はあなたの味方ではない、あなたは不利な立場に置かれている、努力しても無駄なこと、などのネガティブなメッセージを、特に若者たちに向けて送っていると思う。それが、コミュニティのまとまりや社会の調和にとって良いことだとは思わない。これは道徳的価値観の見せびらかしにすぎず、レイシズムだろう。誰のためにもならない。(4:22)


(7:08)
マーザ: 数週間前にラミー・レビュー(訳注: デビッド・ラミー議員による人種不均衡に関する報告書)が公開されたとき、私はそれについて批判的に書いた。デビッド・ラミーは刑事司法制度に人種的な偏見が存在すると主張する。しかし、この報告書で彼が示したエビデンスはすべて、逆の事実を指し示している。中に入ってみれば、制度は非常に公正である。問題はある。カリブ系黒人集団は逮捕される可能性が高い。その原因として、さまざまな社会的理由が考えられる。しかし、制度自体、つまり公共サービスが肌の色によって人々を不公正に扱っていると主張することは、基本的には白人の担当者が民族によって人を不公正に扱っていると主張することであり、それは非常に害が大きく、公共サービスへの信頼を破壊し、こうした民族集団に属する若者を疎外する。率直に言って、統計の背後にあるものをより正確に語ることを阻むような形で統計を利用することは無責任である。
(8:13)
(翻訳ここまで)


また、2018年12月にはポッドキャストの「TRIGGERnometry」にも出演して1時間ほど話しています。こちらは私もまだ全部は見ていないのですが、リンクを貼っておきます。

www.youtube.com


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コンスタンティン・キシンがブラック・ライブズ・マター (BLM) を支持しない理由

私がよく見るポッドキャスト番組の1つに『TRIGGERnometry』という番組があります。司会はコンスタンティン・キシンとフランシス・フォスター。2人ともイギリス人コメディアン。キシンはロシア出身、フォスターは母親がベネズエラ人でベネズエラで暮らした経験あり。つまり、共産主義(または、その名残)を経験しているというわけです。


最近のブラック・ライヴズ・マター (BLM) の抗議運動についてキシンは懐疑的で、いろいろと発言しています。その中から2つほどご紹介します。

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まず、Talkradioという局のラジオ番組のインタビュー。聞き役はジュリア・ハートリー=ブリュワー。彼がBLMを支持しない理由について。



(翻訳ここから)

人々は本当に怖がっている。多くの人がプライベート・メッセージを送ってきて、「あなたの論点に完全に同意するが、それを公言すれば私は職をクビになってしまう」と言っている。


ラジオ番組の司会者が、「『白人の特権』というのが正しい方向性なのか」と疑問を呈しただけで番組を降ろされた。この問題について熟考しようとすれば、自動的にレイシストと非難される。ここは明確にしておこう。今起きていることに同意しない、または支持しない黒人はたくさんいる。


しかし、彼らの声はメインストリーム・メディアでは伝えられない。メインストリーム・メディアがやっていることは、反論を許さないということ。誰からの反論だろうが関係ない。はっきりさせておこう。黒人の命は大事だと誰もが思っている。警察の暴力は許容できないと誰もが思っている。


ジョージ・フロイドの死は惨たらしい殺人だと誰もが思っている。犯人は、法の許される範囲において裁かれるべきだと思っている。二度とこんなことは起きてはならないと思っている。しかし、BLM(ブラックライヴズマター)という組織についていえば、ぜひ皆さんにBLMのWebサイトに行って、彼らの掲げる目標を見てほしい。核家族の廃止、資本主義の廃止、警察の廃止。家族や警察の廃止など、私たちの社会の基本原則を廃止することを支持しなければレイシストになるのであれば、私たちのほとんどがレイシストになるのではないか?

(翻訳ここまで)


ただし、キシンによると、BLMのウェブサイトがここ一日ぐらいで更新されたそうで、以前は目標がいくつもリストアップされていたのだが、それが削除されたのだそうです。



それから、もう1つ。彼のツイッターの連続投稿を翻訳してみました。一部は過激化もしたBLMの抗議活動を受けて、イギリスの政治状況がどのように変わるのかを予測するツイート (スレッド) です。



(翻訳ここから)

こんなことを書く私をあなたは嫌うだろう。私が言うことに抵抗するだろう。それが本当であってほしくないと思っているからだ。本当だと思いたがっているのは私の方なんだと、あなたは思い込もうとする。こんなことになったのを何よりも嫌っているのは私なのに。


これから次のようなことが起こる。


抗議活動をしている人たちがチャーチルの像を穢したり、慰霊碑の上で英国国旗を燃やしたりし続ければ、それらを守ろうとする集団が形成される。こうした集団を構成するのは、主に怒った若い白人の男たちだ。それを率いるのは、イングランド防衛同盟やトミー・ロビンソンにつながる人たち。これはすでに発生している。


こうした集団は、”国を守る” ために都市中心部に集まる。その名前には、”愛国” “ブリティッシュ” “防衛” などの言葉が入っている。


現在の抗議者や警察と彼らが衝突するのは避けられない。メディアや政治家からの圧力により、警察は過剰に反応する。彼らに対する警察の取り扱いは、BLMの抗議者とは異なる。実力行使するだろう。ロックダウンを破ったということで拘束するだろう。厳しい判決を下すだろう。


メディアは、BLM の抗議者に対してしたこととは反対のことをこの集団に対して行う。「大方において平和的に行われた抗議で、27人の警官が負傷した」と書くかわりに、「極右の暴力で27人の警察が負傷した」などといった見出しで一面に大きな記事を出すだろう。


この時点で、一般市民の大部分は微妙な文脈を読み取る力を失う。ダブルスタンダードは無視できないほど明白になる。既に行われているように、白人がひざまずき、PoC(有色人種)の足を洗い、公開で謝罪する映像/画像が絶え間なく流れ、それによって一般市民は彼らのアイデンティティそのものが攻撃されていると結論付ける。


この時点で、荒っぽい極右集団を嫌悪するという分別は失われる。人々は生存を賭けて戦っているのだと思い込み、極端な手段が正当化される。


経済不況による大量失業に突き動かされ、次の選挙は早い時期に起こる可能性が高い。その選挙では、極右政党が躍進する。移民コントロールを議題にするような、極左が呼ぶところの “極右” のことを言っているのではない。移民や国外退去の政策を逆戻りさせようとするような本当の極右政党だ。


こうした政党は多くの議席を得ることはないだろうし、政権に近い存在になることもないだろう。しかし、彼らはUKIPがやったようなプレッシャーを保守党に与える。ボリス・ジョンソンは、弱くてリベラルすぎるとして引きずりおろされ、法と秩序を重視する強硬派の政治家に取って代わられる。


ここから先は、残念ながら、何が起こるか明白だ。


これを防ぐ唯一の方法は、社会を再び人種主義化しようとする動きを押し戻すことだ。共に生きることを学ばなければ、多民族社会という考えそのものが終わってしまう。

(翻訳ここまで)


誰もがレイシズムに反対だが、だからといって、誰もがBLMを支持しなければならない、ということではない。BLMは、名前からもわかるように、あまりにも人種主義的すぎる (人種にフォーカスしすぎている、アイデンティティに固執しすぎている) と考える人もいるだろう。そして、社会を人種主義的にすることは、必ずしもレイシズムの解決にはつながらない。

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「タッカー・カールソン・トゥナイト」に出演したヘザー・マクドナルドの発言を訳しました

前回の投稿では、ヘザー・マクドナルドがウォール・ストリート・ジャーナル紙に書いた記事、「『制度化されたレイシズムが警察には存在する』という作り話」を訳しました。


ヘザー・マクドナルドは、『The War On Cops』(対 警察官 戦争)の著書もある、マンハッタン・インスティチュート(保守系シンクタンク)のフェローです。


彼女が6月4日の「タッカー・カールソン・トゥナイト」(Fox News)に出演してコメントしていました。簡潔にまとまっていたので、これもまた以下に訳してみました。


www.youtube.com


(翻訳ここから)

(0:29)マクドナルド: これ(警察に組織的な偏見があるというナラティブ)は、嘘であり、危険なナラティブだ。今から振り返って考えれば、2015年と2016年には、世情不安や市民の暴動は全米で最低限しか発生しなかった。しかし、殺人の犠牲となった黒人男性は2000人も増えた。なぜなら、警察が警察活動を弱めてしまったからだ。現在、犯罪数は急上昇し、警官も殺されている。殺される警官は今後も増えるのではないかと懸念されている。


警察が警察活動を弱めたとき、警察予算を削減したとき、最も被害を受けるのは誰か? いや、予算を削減する必要すらなく、警察のさまざまな活動が非合法化されている。街なかで罪のない子供を銃で殺すギャングや犯罪者を逮捕するとき、警官に向けられる憎悪は凄まじい。それによって被害を受けるのは、法律を守りながら都市に住む数多くの住民だ。


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彼らは警察による保護を切望している。ブロンクスのマウント・ホープに住むある人、この人は癌で手足の一部を切断しているのだが、彼女はこう言った。「神よ。警官をもっと送り込んでくれ。住んでいる建物のロビーに危険を感じずに行けるのは、警官の姿が見えるときだけ」。警官がいなければ、薬物やマリワナを売る不法侵入の若者がたむろしているからだ。


サウス・ブロンクスの第41管区に住む高齢の女性はコミュニティ・ミーティングで立ち上がってこう言った。「警官の姿を見るのはなんと素敵(Lovely)なことか。警官は私たちの友人」。


メディアはこうした声をわざと伝えない。これらの声を伝えると、この国の警察には組織立ったレイシズムと白人優越主義が存在するというでっちあげのナラティブが壊れてしまうからだ。


f:id:tarafuku10working:20200607032659p:plain


タッカー: 「でっちあげ」が生やさしい言葉に聞こえる。扇動家やテレビはこう言っている。扇動家と言っても選挙で選ばれた人々、国を動かす人々だ。「大虐殺が起きている。警察からアフリカ系アメリカ人への終わりなきレイシスト・アタックが次々と起きている。多くの人が死んでいる」。2019年には(警官に殺された非武装の黒人は)10人だけ。事実の裏付けはまったくないのに、彼らはなぜそんなことを言えるのか。


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マクドナルド: 皮肉なことに、このデータはワシントン・ポスト紙のデータベースによるもので、非武装の定義も非常に広義のものが採用されている。しかし、同紙はこのことを書かない。興味深いデータをもう1つ。警官が黒人男性に殺される可能性は、非武装の黒人男性が警官に殺される可能性の18.5倍もある。


犯罪や警察活動についてさまざまなデータがあるが、どの犯罪であっても犯罪率によって黒人を人種的にステレオタイプで見るべきではないし、1件の逮捕が恐ろしい結果につながったからといって、警官をステレオタイプで見るべきでもない。


警官は戦術的なトレーニングを切実に必要としているし、緊張の段階的緩和やコントロールについて支援を必要としている。しかし、警察には組織的な偏見は存在しない。

(翻訳ここまで)


上の動画が消されたときのために、予備にもう1つ動画を貼っておきます。同じ番組の動画ですが、こちらの方が長くなっています。


www.youtube.com


2020年6月10日追記:

「警官が黒人男性に殺される可能性は、非武装の黒人男性が警官に殺される可能性の18.5倍もある」というマクドナルド氏の発言について、18.5倍というのはどこから導き出されたのか、という質問をTwitterで頂きましたので解説します。


マクドナルド氏の説明によると、2015年に警察に射殺された非武装黒人男性は36人。全米の黒人男性の人口は1900万人。よって割合は0.0000018%。殺された警官は52人。警官の総数は628000(2014年)。したがって、割合は0.000082%。2015年の警官殺害犯に黒人が占める割合は40%と推定(過去の統計から概算)。そうすると、割合は0.000033%になる。そして、0.000033%は、0.0000018%の18.5倍、という計算とのことです。下のリンクに詳しい説明が書かれています。


www.manhattan-institute.org



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WSJ紙の記事「『制度化されたレイシズムが警察には存在する』という作り話」を訳しました

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ミネアポリスで黒人男性が警官に圧死させられた事件に関連して、「『制度化されたレイシズムが警察には存在する』という作り話」(The Myth of Systemic Police Racism)という記事が、6月2日、ウォール・ストリート・ジャーナル紙のオピニオン欄に掲載されました。

www.wsj.com


書いたのはヘザー・マクドナルド氏。彼女はマンハッタン・インスティチュートという保守系シンクタンクのフェローで、『The War On Cops』(対 警察官 戦争)という著書もあります。


黒人男性を死に至らしめた警察官の責任は追及されるべきだが、黒人に対する「制度化された差別」が警察に存在するというのはまったく根拠のない話である、という主張です。


以下に翻訳しました(約2000字)。


(翻訳ここから)

『制度化されたレイシズムが警察には存在する』という作り話
文: ヘザー・マクドナルド
2020年6月2日

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2019年、1004人が警察によって射殺された。そのほとんどが武装していたか、危険な人物だった。昨年、警官によって殺された人のうち、アフリカ系アメリカ人が占める割合は約4分の1 (235人)。この割合は、2015年以来、変わっていない。警察による銃撃は、武装した容疑者や暴力的な容疑者に警官が直面する事例の数に比例するが、黒人の犠牲者の割合は、黒人の犯罪率から予想されるよりは低い。現在入手可能な最新データである2018年の数字を見てみると、特定された米国の殺人犯の53%、強盗犯の60%がアフリカ系アメリカ人である。アフリカ系アメリカ人が全人口に占める割合は13%に過ぎない。


ワシントン・ポスト紙のデータベースによると、2019年に警官が射殺した非武装の黒人は9人、非武装の白人は19人。それぞれ、2015年の38人と32人から減っている。同紙が採用する「非武装」の定義は広義のものであり、警察とのカーチェイスの間、弾を込めた銃を車内に保持していたニュージャージー州ニューアークの事件も「非武装」として扱われている。2018年、殺人の犠牲となった黒人は7,407人。昨年もほぼ同じ数だったと仮定すれば、警官に射殺された黒人犠牲者の9人が2019年に殺されたすべてのアフリカ系アメリカ人に対して占める割合は0.1%ということになる。これとは対照的に、警官が黒人男性に殺される確率は、非武装の黒人男性が警官に殺される確率の18.5倍である。


メモリアル・デイの週末(5月の最後の週末)、シカゴだけで10人のアフリカ系アメリカ人がドライブバイ・シューティング(走る車の中から相手を狙撃する犯罪)により殺された。こうした暴力が日常的に続いている。5月29日、シカゴに住む72歳の男性は、顔面に銃撃を受けて死亡した。ガンマンが12発の銃弾を住居に撃ち込んだのである。その数時間前、駐車した車の中にいたサウスサイドの19歳の女性2人が射殺された。同じ日、16歳の少年は、彼自身が所有していたナイフで刺し殺された。先週末だけで、80人のシカゴ市民がドライブバイ・シューティングで撃たれ、そのうち21人が命を落とした。被害者の大部分は黒人だった。白人とヒスパニック系を合わせたよりも、黒人が殺人で死ぬ可能性が8倍も高いのは、警官に撃たれるからではない。犯罪者による暴力がその理由だ。


警察に組織立った偏見があるという主張を揺さぶる調査結果はいくつも出ているが、その最新のものは2019年8月に発表された全米科学アカデミーの紀要である。どの人種集団であるかを問わず、警官が暴力的な容疑者に直面する機会が増えるほど、その集団に属する人が警官に射撃されて死亡する可能性も高くなる、という調査結果である。研究者たちは、「警察に銃撃されて命を落とす可能性において、反黒人の不均衡が存在するという有効な証拠は見つからない」と結論付けている。


2015年に発表されたフィラデルフィア警察に関する法務省の分析によると、白人の警官が丸腰の黒人容疑者を撃つ可能性は、黒人やヒスパニック系の警官より低い。ハーバード大の経済学者であるローランド・G・フライヤー・ジュニア (Roland G. Fryer Jr.)も、警官の銃撃において人種差別の証拠はないとしている。これとは逆の結論を指し示す証拠はすべて、犯罪率や、警察と接触する前、または接触する間の市民の行動を考慮に入れていない。


オバマが大統領だった時代、警察に組織立った偏見があるという嘘のナラティブが、警官を標的とした殺人という結果につながった。このパターンが繰り返されるのかもしれない。銃を持った容疑者を逮捕しようとするときや、数を増す暴徒に対応しようとするとき、警官は襲われ、撃たれている。警察管区や裁判所は、何の咎めも受けることなく破壊されてしまった。これにより、社会を破壊する暴力はさらにエスカレートするだろう。マイノリティが住むエリアで警官が警察活動を緩めてしまうというファーガソン効果(注1)がミネアポリス効果として生まれ変わるのであれば、基本的な治安を警官に頼っている順法精神に富む数多くのアフリカ系アメリカ人がまた犠牲者となるだろう。


ジョージ・フロイドを逮捕したミネアポリスの警官たちは、過剰な実力行使と彼の苦痛に対する無慈悲な無関心さについて、責任を問われなければならない。 警察の訓練では、緊張の段階的緩和戦略をさらに徹底的に教える必要がある。しかし、フロイドの死は、アメリカの法執行機関の正当性を貶めるものであってはならない。彼らがいなければ、私たちは混沌への道を歩み続けるからだ。


注1: 2014年にミズーリ州ファーガソンでマイケル・ブラウンという黒人男性が警官に射殺された。これにより警察への不信感が高まった結果、警察は警察活動に消極的になり、その結果として犯罪率が上がった、とする考え方。


(翻訳ここまで)


同様のテーマについてヘザー・マクドナルドが語る動画『警察はレイシストか?』も、先日たまたま翻訳しましたので、ご興味のある方はこちらからどうぞ。
togetter.com


こちらは、ミルウォーキー郡で保安官を務めたデビッド・クラーク氏の動画「警官はグッド・ガイ」。
togetter.com


また、別のテーマについて語るヘザー・マクドナルドの動画を3つご紹介します。いずれも、「多様性」の名の元に学問の自由が失われているというテーマの動画です。
togetter.com

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ジョージ・フロイド氏が警官に圧死させられたのは、「制度化された差別」の結果なのか

ミネソタ州ミネアポリスで黒人のジョージ・フロイド氏が警官に取り押さえられた後、約10分にわたって膝で首を押さえつけられ圧死しました。その後、全米各地で抗議運動が発生し、その一部が暴徒化したことはご存じのとおりです。

動画を見る限り、私も警官の責任は追及されるべきだと思いますが、これが白人の黒人に対する、または警官の黒人に対する「制度化された差別」なのだというナラティブにはにわかには賛成しかねます。

そこで、今回も米国の大学院で学ぶザック・ゴールドバーグ氏のツイートを引きながら、反証となるデータを提示したいと思います。


2020年2月28日、シカゴでアリエル・ローマンという白人の男が黒人の警官に撃たれた。どうもシカゴでは地下鉄の車両を移るのが禁止らしいのだが、そのことで咎められ、逃げ出したところをいったんは取り押さえられた。だが、再び逃げ出し、腹と尻を撃たれた。命はとりとめた。武器は持っていなかった。


ProQuest というデータベースによれば、2/28以降、この事件に関する新しい記事は30件。


ジョージ・フロイド氏が警官に押さえつけられて死亡したのは今週の月曜。ProQuest によれば、新しい記事は1,338件。


ローマン氏の家族が募った寄付に集まったのは$1,718。一方のフロイド氏は約260万ドル。


ローマン氏は命をとりとめたのが記事/寄付金が少ない理由かもしれない。だが、4年前に警官(白人)に射殺されたダニエル・シェーバー氏(白人)の場合はどうか。約10万ドル。


同じくほぼ4年前に警官に圧死させられたトニー・ティンパ氏(白人)の場合、ProQuest で見つかる記事は30件。被害者の人種によって反応が大きく違うのがわかる。

また、ゴールドバーグ氏は、ロナルドG. フライアー・ジュニア氏という学者の論文を引いて、次のようにも論じています。


1) 黒人が警官に銃で撃たれる可能性は実際には白人より低い。2) 武器を持っていない白人を撃つ可能性は、黒人の警官の方が白人の警官より高い。


致死的ではない実力行使(蹴る、スプレー/警棒の使用など)を受ける可能性は、(受ける側の)人種によって違いがあったが、警官の人種には関係なかった(つまり、黒人の被疑者にこうした実力行使を行う可能性は、警官が白人でも黒人でも変わらなかった)。

さらに、こういうデータも紹介しています。


2018年以降、警官に殺された丸腰の黒人の数は、黒人に殺された警官の数より少ない。


警官を殺した犯人の人種に関する統計。絶対数としては白人に殺された警官の方が多いが、黒人は全人口の13%であることを考えると、割合としては黒人の方が高くなる。しかも、この統計の「白人」にはヒスパニック系も含まれる。

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