イギリス保守党のケミ・ベイデノック平等問題担当副大臣の国会演説

少し前の話になりますが、イギリス保守党のケミ・ベイデノック (Kemi Badenoch) 平等問題担当副大臣の国会演説が話題になっていたので訳してご紹介します。




アメリカやイギリスでは「Black History Month」という黒人の歴史について考えようという月が毎年ありまして、アメリカは 2 月、イギリスは 10 月です。

ベイデノックの演説は、2020年10月20日に「Black History Month」について何人もの国会議員が議会で演説したものの中の 1 つ。


『BLM (ブラック・ライヴズ・マター) や批判的人種理論 (クリティカル・レイス・セオリー) は政治的なものであり、学校で教えるべきものではない』

『「白人の特権」を事実として教えることは、法に反している』など。


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(翻訳ここから)

私たちは、議論の分かれる政治理念を、あたかも明白な事実のように教えることに反対している。共産主義についても、社会主義についても、資本主義についても、そんなことはしていない。私は、人種間の関係に関する危険なトレンドについて話したい。これは私自身にも深く関係することだ。そのトレンドとは、批判的人種理論の推進である。


これは、肌の黒さゆえに私を被害者とみなし、肌の白さゆえに白人を抑圧者とみなすイデオロギーである。はっきりといっておかなければならないことは、政府は批判的人種理論に明白に反対する立場であるということだ。


一部の学校は、反資本主義のBLMグループを公然と支援することを決定した。多くの場合、政治的中立性を保つことが法的な義務だと知っているにもかかわらずである。黒人の命はもちろん大事だ。しかし、大文字のBlack Lives Matterムーブメントは政治的であることを私たちは知っている。なぜ私が知っているかといえば、プロテストの最中に、白人のBLMプロテスターが、ダウニング・ストリートを警備する黒人の武装警官を、(注: 議長に向かって) この言葉を使うことをお許し願いたいが、「ペットのニガー」と呼んだと聞いているからだ。これが、この議会のこちら側に座っている私たち (注: 与党) がこのムーブメントを支援しない理由だ。


BLMは政治的なムーブメントだ。議会のそちら側 (野党側) に座っている皆さんも、これが完全に健全な反人種主差別組織であるというふりをするのではなく、この政治的ムーブメントが行った行為の多くを非難した方がよいのではないか。数多くの有害なものが押し進められている。私たちはそれに反対する。


白人学生に白人の特権や先祖から受け継がれた人種的な罪について教えるような教師を私たちは見たくない。はっきりと言っておきたい。批判的人種理論のこうした要素を事実として教える学校や、バランスのとれた形で反対意見を提示することなく、警察の予算削減などの党派性露わな政治意見を推進する学校は法律を破っている。

(翻訳ここまで)



ベイデノックの演説全体はこちら。上で訳した部分は下の動画の 1:55 あたりから。

www.youtube.com


ケミ・ベイデノックは、1980年にロンドンのウィンブルドンで生まれた。子供のころをナイジェリアのラゴスとアメリカで過ごす。両親は共にナイジェリア系で、父親は医者、母親は生理学教授。2015年からロンドン議会議員。2017年から庶民院議員 (エセックス州のサフロン・ウォルデン選挙区選出)。




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2016年に比べてトランプ大統領に投票した有色人種/女性/LGBTの有権者が増えた件

大統領選挙の投票が終わり、大手メディアはバイデン氏の当選を宣言しました。トランプ氏は選挙の不正を主張して徹底抗戦の構え。まだまだひと悶着もふた悶着もありそうです。


人種差別主義者、性差別主義者などとメディアにレッテルを貼られ続けたトランプ大統領ですが、2016年と比べて白人男性以外の人種/性別で得票を増やしているというデータが出ています。(Edison 社の出口調査)。


また、LGBT コミュニティーからの得票率も倍増とのこと。


こうした傾向の背景についてはもう少し詳しく調査をしなければならないのだと思いますが、興味深い例が1つありましたのでご紹介します。


ノースカロライナ州にロブソン郡 (Robeson County) という郡があります。人口は約13万人。そのうち 42% がネイティブ・アメリカンのラムビー族です。2012年の大統領選挙では、同郡の選挙管区のうち、ラムビー族が多数派を占めているところは、すべてオバマが勝利しました。ところが、今回の選挙では、それらのすべてをトランプが奪ったのです。


ラムビー族が多数派を占める選挙管区の候補者別得票率は以下のとおり。


2012年
オバマ (民主): 59.4%
ロムニー (共和) : 39.2%

2020年
トランプ (共和): 69.1%
バイデン (民主) : 30.1%



ものすごい変わりようですね。


ロブソン郡全体 (つまり、ラムビー族が多数派ではない選挙管区も含む) の過去 3 回の勢力図は以下の図のとおり。民主党のシンボルカラーである青が、共和党の赤に塗り替わっていく様子がわかります。



トランプ大統領は今年 10月下旬にロブソン郡で政治集会を開いています。そして、その直前に、ラムビー族に連邦政府の承認を与える法案を支援すると宣言しています。


上でツイートを引用させてもらった編集者のJ. マイルズ・コールマン氏の分析。「一般的にラムビー族は社会的に保守的で、2012年には同性婚を事実上禁止することに票を投じた。2016年にはトランプを支持したものの、州の選挙では民主党に投票している。国政レベルの民主党がこうした文化的な問題でリベラル色を強めるなかで、この選挙区が民主党から離れていくのは自然なことではないか」

www.washingtonexaminer.com


ここから先はちょっと余談になりますが、この話題を私が知ったのは、クリス・アーナーディ (Chris Arnade) さんという写真家をツイッターでフォローしているからです。


彼は投資銀行に勤めた後、フォトグラファーに転向。全米のマクドナルドを巡り、そこに集う人々の姿をカメラに収めました。つまり、どちらかといえば貧しい人々や忘れ去られた人々のポートレートです。ヒラリー・クリントンが「嘆かわしい人々」と呼んだ人々なのかもしれません。アーナーディ自身はこうした人々を総称して「Back Row America」(後ろの列のアメリカ) と呼んでいます。そして、『Dignity』という写真集にまとめました。


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アーナーディはロブソン郡も訪れて人々と話し、写真を撮影しています。残念ながら『Dignity』に収めることはできなかったのですが、そのときの様子を Twitter に投稿しています (スレッドになっています)。



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David McNeill's article on Abe's resignation

David McNeill wrote an article for the Irish Times on PM Abe's resignation. It is published on 28 August 2020 for the Irish Times.

www.irishtimes.com


I wrote my comment in the readers' comment section for the article.


My comment is as follows (with some tweaks):

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It is interesting to compare this article with the one David McNeill wrote when Naoto Kan, the then-leader of the lefty Democratic Party of Japan (DPJ), stepped down as the Prime Minister in August 2011.

www.irishtimes.com


Kan’s record as the PM was dismal. He mishandled the 2011 earthquake/nuclear plant incident. He did not do any good to the economy or foreign affairs. The approval rating for his administration plunged to as low as 15%.


Despite all these, McNeill’s article for Kan’s resignation was sympathetic and even poetic (see the first paragraph of the article). The headline read “'Least bad' Japanese leader Naoto Kan throws in the towel”. He quoted two academics who both desperately tried to save Kan’s butt. No opposite view was offered.


On the other hand, in his latest article, McNeill tried painstakingly to make sure the reader would perceive Abe as a hawkish right-winger/revisionist, played down what Abe achieved and hoped Abe would be remembered as a caretaker (well, McNeill’s wording is “History may well record him as a political caretaker”).


Of course, Abe did not play a perfect game and his record is mixed. However, compared to Kan, he fared much better. In terms of the economy, Nikkei went up from 8,500 to 24,000, the unemployment rate came down from 4.3% to 2.4%, and the jobs-to-applicants ratio rose from 0.8 to 1.6. (The figures are all 2012 vs. 2019). The suicide dropped from 27,858 to 20,169 as well. As for the international relationship, he enhanced existing alliances and developed new partnerships. The number of Covid-19 deaths is relatively low.


According to the Kyodo poll conducted on 29/30 August after the announcement of his resignation, the approval rating for the Abe administration soared by 20.9% from a week ago to 56.9%. On hearing the announcement, Nikkei collapsed by nearly 600 points to 22,735 and ended the day at 22,882.


McNeill clearly failed to capture the reality and the prevailing sentiment in and around Japan again. Or he refused to do so. After all, McNeill is a kind of journalist who puts his own political or ideological agenda before journalistic commitments to finding the truth and documenting empirical facts. Look at the final line of the article. It is McNeill who wants to see Abe’s tenure as a failure. That is his wishful thinking. A wishful thinking does not belong to the straight news section. It may to the opinion section if anybody’s wishful thinking is ever worth publishing on a national newspaper.


Here is more realist/less ideological piece from BBC if interested.


www.bbc.com


This article is written by Dr John Nilsson-Wright, Chatham House (Korea Foundation Korea Fellow and Senior Fellow for Northeast Asia) & University of Cambridge


For what McNeill described as “School textbooks have removed references to war crimes” which was the highlighted text on the print copy, Nilsson-Wright said, “moved away from overly self-critical historical narratives in high-school textbooks.”


Regarding Sino-Japanese relations, Nilsson-Wright wrote:
“Sensibly, while Mr Abe has remained acutely aware of the geostrategic threat posed by China, this has not been allowed to block opportunities for pragmatic co-operation with President Xi Jinping.”


Nilsson-Wright concludes his article as follows:
“Notwithstanding Mr Abe's aspirational, but at best partially realised nationalist ambitions, his pragmatic achievements are likely to be his most enduring legacy.”


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デイビッド・マクニールが安倍首相辞任時と菅直人首相辞任時に書いた記事を比べてみた

日本外国特派員協会のデイビッド・マクニールが、アイリッシュ・タイムズ紙に安倍首相辞任に関する記事を書いていた。


www.irishtimes.com


2011年8月の菅直人の退陣時に彼が書いた記事と比べてみると、彼がジャーナリストとしての責務よりも、自分の政治的・思想的アジェンダを優先する人間であることがよくわかっておもしろい。


www.irishtimes.com


経済にも外交にも原発事故の処理にも、菅直人はいいところを見せられなかったのは周知の事実だが、それでもマクニールの記事は菅に非常に同情的だ。2人の学者 (上智の中野晃一とテンプル大のジェフ・キングストン) の言葉を引用して管を擁護する。反対意見は紹介されない。


今回の記事では、マクニールは安倍が祖父の岸信介の墓参りをして「日本の真の独立を取り戻す」と誓った話から入り、岸がA級戦犯で逮捕されていたことにも触れ、安倍が右翼的な政治家であることを読者に印象付けようとする。安倍の業績を過小評価し、「歴史は彼をつなぎ役 (caretaker) として記憶するだろう」と書く。


ご存じのように安倍政権下で日経平均は 8,500 から 24,000 へと上昇し、有効求人倍率は 0.8 から1.6へと大幅に改善した。失業率は 4.3% から 2.4% へと下がった (消費税を上げたのは間違いなく失策だったが)。外交でも力を発揮した。従来からの同盟関係を強化し、新しいパートナーシップも開発した。新型コロナによる死者数も比較的少ない。辞任発表後に日経平均は600pt近く急落し、共同通信の世論調査では内閣支持率が20.9%上がって56.9%となった。


菅辞任のときもそうだったように、今回もマクニールは日本内外の現実を記事に反映することができなかった。もしくは、そうすることを拒んだ。彼は真実を見つけて事実を語るというジャーナリストの責務より、自分の政治的・思想的アジェンダを優先させることを当たり前に思っている人間だからだろう。


アイリッシュ・タイムズはマクニールの記事を「Analysis」などと銘打っているが、たとえばこちらのBBCの記事と比べると薄っぺらさが際立つ。


www.bbc.com


マクニールは外交・経済・安全保障についてはおざなりで、安倍=右翼的と印象付けることにしか興味がないようだ。


BBC の記事は、チャタム・ハウス/ケンブリッジ大学のジョン・ニルソン=ライト教授が書いたものだ。


たとえば、マクニールは「学校の教科書から戦争犯罪に関する記述を削除した (School textbooks have removed references to war crimes)」と書いていて、アイリッシュ・タイムズの紙面ではこの部分が大きめの文字でレイアウトされている。ジョン・ニルソン=ライトの記事では、これは「高校の教科書に関して、過度に自己批判的な歴史記述から離れた (moved away from overly self-critical historical narratives in high-school textbooks)」となっている。


ジョン・ニルソン=ライトは、記事を次のように締めくくっている。「安倍の意欲的だが、よく言っても部分的にしか実現できなかったナショナリスト的大志よりも、実際的な成果こそが最も息の長い彼のレガシーとなる可能性が高い」(Notwithstanding Mr Abe's aspirational, but at best partially realised nationalist ambitions, his pragmatic achievements are likely to be his most enduring legacy.)


結局のところ、マクニールのこの記事は、日本の左派野党がなぜダメなのかを図らずも体現するものとなった。安倍=右翼の印象操作だけできれば満足で、外交・経済・安全保障などの重要な問題についてはほとんど語ることができないのだ。

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記事翻訳『トランプの政治集会に参加した私は、民主党が2020年の準備ができていないことを悟った』

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『トランプの政治集会に参加した私は、民主党が2020年の準備ができていないことを悟った』という記事を訳してみました。記事を書いたのは、ニューハンプシャー州に住むカーリン・ボリセンコという女性。心理学の博士号を持っていて、ふだんは、労働環境などについて企業にアドバイスする仕事をしているそうです。

gen.medium.com


20年にわたる民主党支持者で、趣味の編み物に没頭していた彼女が、なぜトランプの政治集会に参加し、なぜ考えを変えたのか。彼女は、この記事を書くまで特に政治的な言論活動をしていたわけではなかったのですが、それはどうしても言葉にしなければならない体験だったようです。


記事を掲載したのは、ミディアム (Medium) というオンライン・プラットフォーム。Twitter や Blogger の共同設立者であるエヴァン・ウィリアムズが主宰するプラットフォームです。


記事が公開されたのは2020年2月11日。共和党の候補者が誰になるのか、激しい争いが繰り広げられていた頃の話になります。


(翻訳ここから)
トランプの政治集会に参加した私は、民主党が2020年の準備ができていないことを悟った。

私は20年間民主党を支持してきた。しかし、この体験 (トランプの政治集会に参加するという体験) は、私の党がこの国の一般的な人々からいかにかけ離れているのかを気付かせてくれた。

文: カーリン・ボリセンコ (Karlyn Borysenko)
2020年2月11日

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左派の私たちは鏡をじっくりと覗き込み、何が起きているのか正直に会話する必要があると思う。


ドナルド・トランプの政治集会に参加することになるだろうと3年前の私に誰かが言ったとしたら、私は笑い飛ばしただろう。そんなことなど起こりっこないと。3か月前ならどうだろう? 私の反応はおそらく同じだったはずだ。そんな私がなぜ、ニューハンプシャー州マンチェスターで、11,000人を超えるトランプ・サポーターに囲まれていたのか? 信じられないかもしれないが、すべては編み物から始まった。


編み物の世界は特に政治的だと思われてはいないかもしれない。しかし、それは間違いだ。編み物の愛好家の多くは、社会正義のコミュニティで活動している。そして、私たちの文化において編み物愛好家が果たしてきた革命的な役割について語りたがる。私がそれに気付いたのは1年ほど前だ。特にインスタグラムでその傾向は強かった。私が編み物をするのは、現実世界のあれやこれやを忘れてリラックスするためであって、現実世界にさらに深く関わるためではない。しかし、編み物コミュニティのオンライン社会正義戦士の一群が、彼らのイデオロギーに沿わない人々を追い掛け回し始めるのを無視することは不可能だった。インスタグラム上の編み物界の有名人たちは、一見なんでもないような言葉を発したために、何百人もの人々に叩かれ、もみくちゃにされた。ある男性は、あまりにこっぴどく叩かれたため、ノイローゼに陥り、自殺しないようにと病院に担ぎ込まれた。こうしたヘイトについて納得できないことはたくさんある。そして、政治的に私と同じ傾向を持つ人々が吐き出す辛辣な言葉を目にしたことで、私の頭の中に警報が鳴り響いた。


私は、トランプに投票する人はすべてレイシストだと考えるような民主党支持者の1人だった。彼らはひどい人々だと (そして、嘆かわしい人々だとすら) 考えていた。どんなに些細なコメントであったとしても、トランプ支持を表明する人をフレンド解除し、ブロックすることで、自分の空間から彼らの声を取り除くことに腐心した。私は MSNBC をよく視聴していた。そして、トランプはひどいことしかしないし、異性愛の白人男性以外の人をすべて憎んでいるし、欠点を補う長所などひとつも持っていないと信じ込んでいた。


しかし、この小規模でニッチな編み物コミュニティにおいて、左派からの大量の憎悪を目の当たりにした私は、すべてを疑い始めていた。意見の異なる人の声を聞くことで、エコー・チェンバーを打ち破るための積極的な努力を開始した。彼らの考え方を理解したかった。彼らは意見を同じくしないすべての人に対する憎しみで満ちあふれている。それが再確認でるはずだ、と信じていた。


だが、私は間違っていた。左派以外の声を聞けば聞くほど、彼らは悪い人々ではないことがわかった。彼らはレイシストでもナチスでも白人至上主義者でもなかった。社会的な問題や経済的な問題についての意見の違いはある。しかし、意見が違うからといって、彼らが本質的に邪悪だということにはならない。そして、彼らは議論を通じて意見を主張した。私が味方だと思っている人々が、がなり立て、わめき散らすことで意見を通そうとするのとは違っていた。


私は ウォーク・アウェイ (#WalkAway) ムーブメントを発見 (おそらく再発見) し始めた。#WalkAway については聞いたことがあった。MSNBC が、それはフェイクでロシアのボットだと言っていたからだ。かつては民主党支持者だったが、左派の振舞いに我慢ができずに民主党を離れた人々に実際に会ってみることにした。私は、さまざまなマイノリティ・コミュニティのために彼らが開いたタウンホール・ミーティングを視聴した (YouTube ですべてを見ることができる)。また、さまざまな肌の色、バックグラウンド、指向、 体験を持つ人々の分別ある理性的な議論に耳を傾けた。そのコミュニティの Facebook グループに参加し、毎日のように新しい人が現れては、民主党から離れた理由を語るのを聞いた。それはフェイクではなかったし、彼らはロシアのボットでもなかった。それは新鮮な体験だった。そのグループ内には、普遍的な合意などというものは存在しなかった。トランプを支持する人もいたし、支持しない人もいた。彼らは、罵声を浴びせるでも逆上するでもなく、互いを糾弾して排除しようとするでもなく、意見を交わし、シェアしていた。


(注: WalkAway キャンペーンは、もともとはゲイ・ライツの活動家だったブランドン・ストラカが 2018 年に始めたソーシャル・メディア・キャンペーン。社会の分断を拡大するような姿勢を取り続ける民主党から離脱 (WalkAway) することを呼び掛ける運動。ストラカの声明動画の翻訳はこちらから↓)


togetter.com


私はあらゆることを疑い始めた。真実ではないストーリーを私はどれほど信じ込まされてきたのか? 敵陣営に関する私の認識が間違っていたとしたらどうだろうか? 国の半分があからさまにレイシストなどということがありうるのか? 「トランプ錯乱症候群」(注: トランプのやることなすことすべてに反対する人々を指す言葉。揶揄として使用される) は実際に存在し、過去 3 年間、私はこの病を患っていたのだろうか?


そして、最大の疑問はこれだ。トランプと彼の支持者を困らせるためだけにこの国が失敗すればいいと考えるほど、私はトランプを憎んでいたのか?


ニューハンプシャー州の予備選挙に話を戻そう。あらゆる政治家が、有権者にアピールするために州内を駆け回っていた。私はほとんどすべての民主党支持者を実際にこの目で見た。そして、彼らのメッセージはほぼ間違いなく悲観的で陰鬱なものだったということを知った。ドナルド・トランプとの明白な意見の違いに焦点を合わせるだけでなく、この国がいかにひどい人種差別がはびこる場所だということを強調するのだ。


もちろん、人種について言えば、私たちが社会として検討しなければならない切実な問題を抱えていることは間違いない。私は、性別やバックグラウンドにかかわらず、あらゆる人が平等な機会を得るべきだと信じている。そして、ある人が別の誰かよりも本質的に価値がある、または価値がないという考えには反対である。2017年にバージニア州シャーロッツビルで行われた抗議集会では、本物のレイシスト、本物のナチス、本物の白人至上主義者が悲劇を引き起こした。しかし、こうしたレッテルは、ほとんどのトランプ支持者には当てはまらないことを私は理解し始めた。


それでもまだ、トランプの集会に参加すると考えることすら嫌だった。私は、トランプの態度がこの国で最高の公職に就く人物にふさわしいとは思わない。彼のツイートは大嫌いだ。彼の政策の多くに強く反対する。しかし、それでも、私は自分の目で確かめたかった。


正直に言えば、私は不安だった。そこで、慣れ親しんだ場所から始めることにした。集会から数ブロック離れた場所で MSNBC がライブで番組を中継していたので、まずそこを訪れたのだ。私は、トランプ帽に似た赤い帽子を被ることにした。しかし、トランプ帽とは小さな違いが 1 つだけあった。「Make Speech Free Again」(言論の自由を取り戻そう) と書いてあるのだ。それは、キャンセル・カルチャーに対する私のささやかな抵抗だった。笑い話にでもなればと、私はそれを被ったまま、MSNBC のキャスターのアリ・メルバーと写真まで撮った。


www.instagram.com


おもしろいのは、その帽子は人によってどのようにでも解釈できることだ。左派の人々といるときに被れば、それは右派に対して意見していると解釈される。右派の人々といるときに被れば、それは左派に対して意見していると解釈される。それは、私たち自身の視点やバイアスが世界の見方にどれほど影響を与えるかを、あらためて思い出させてくれた。


私は、収録の現場でおしゃべりする中で、トランプの集会に行ってみようと思っていると軽い調子で口にした。彼らは何よりもまず、私の身の安全を心から心配してくれた。見知らぬ人が、彼らを避けるようにとあれほど熱心に説得してくれたのは初めてだった。ある女性は、トランプ支持者は最低の人々だと言った。別の男性は、過去にトランプの集会に行ったとき、いかつい体をした大男たちの嫌がらせの的になったと言った。別の女性は、ペッパー・スプレーを持たせてくれようとした。私は大丈夫だし、不安になったらすぐに逃げだすからと、彼らを安心させた。


彼らが知らなかったことは、実は彼ら以外にも危険について忠告してくれた人がいたことだ。私は右寄りのオンラインの友人にも話を聞いていた。彼らも私が集会に行くことを本気で心配してくれた。ただし、他の参加者を恐れたからではない。左派が参加者を暴力的に攻撃することを恐れていたのだ。その前日、フロリダの共和党登録テントに車が突っ込むという事件があった。似たようなことが起こるのではないか、また、アンティファがボストンからバスで人を送り込むのではないかと、真剣に警戒されていたのだ。左寄りの人々に対してそうしたように、右寄りの友人にも私は大丈夫だと言って安心させた。そもそも、ニューハンプシャーではアンティファはほとんど存在感がないのだ。


しかし、不安をまったく感じなかったと言えば嘘になる。周りにいるすべての人があなたの身の安全を心配しているなら、彼らにも一理あると考えないわけにはいかない。しかし、だからこそ、私はこの目で確かめたくなった。どちらも相手を同じような目で見ていることが、はっきりと確認できたからだ。どちらも相手のことを恐れ、相手が何をするか不安に思っていた。少しの間でも、彼らが相手のレンズで世界を眺めることができたらどうなるだろうと考えざるをえなかった。自分たちが思うほど世界が見えていなかったことに、はっきりと気付くのではないか。


開場の 1 時間半前に私はアリーナに着いた。それは、すなわち、トランプが登壇する 4 時間前ということだ。ドアが開くのを待つ列は、既に 1 マイル (1.6km) にも達していた。待つ間、私は周りの人と会話した。事前に聞かされていた悪い話とはまったく逆に、彼らはとても感じのいい人たちだった。からかわれも、脅されもしなかった。一瞬たりとも身の危険を感じることはなかった。彼らは、どこにでもいる普通の人々だ。退役軍人もいたし、教師もいたし、自営業の人もいた。この集会に参加するという興奮を味わうために、あらゆる場所から集まってきている。彼らは上機嫌で、ワクワクしているのがわかる。私は、会話の中で、自分は民主党支持者だと口を滑らせもした。彼らの反応は、「よく来たね。ようこそ」だった。


会場の中は、ゴキゲンなムードに満ち溢れていた。それは政治集会というよりもロック・コンサートだった。人々は心の底から楽しんでいた。ラウドスピーカーから流れる音楽に合わせて踊っている人もいた。それは、私が参加してきたどの政治集会とも大きく異なっていた。2008年のバラク・オバマのときですら、これほどのエネルギーは感じなかった。


その 2 日前、民主党のすべての候補者が登壇したイベントに私は参加していた。会場も同じだった。しかし、雰囲気は対照的だった。まず、トランプの集会では、会場は上から下まで埋め尽くされていた。民主党の集会はそうではなかった。主だった民主党候補が全員出席し、無料チケットを配布していたにもかかわらずだ。トランプの集会では、すべての人々が 1 つの目標に向かって団結していた。民主党の集会では、聴衆は気にくわない候補者にブーイングし、互いに怒鳴り合っていた。トランプの集会では、未来を見る目はまぎれもなく楽観的だった。民主党の集会にあったのは、悲観と陰鬱さだった。トランプの集会には、アメリカ人であることを心の底から誇りに思う気持ちがあった。民主党の集会では、この国は上から下までレイシストなのだと強調していた。


トランプは常に最良のシナリオを提示しようとする。彼は嘘もつく。それは証明可能だ。しかし、この集会の強みは、事実や数字にあるのではない。自分たちの味方をしてくれる人がいる。自分たちのために戦ってくれる人がいる。そう感じて集まってきている人々。それがこの集会の強みだ。「そりゃあ、彼らは楽しんでいるのだろう。カルト集団なのだから」と言う人もいる。しかし、それは違うと私は思う。現実には、私と話をした人の多くは、なんらかの点でトランプに同意していない。必ずしもトランプの態度が好きなわけでもない。あんなにツイートしなくてもいいのにと思っている。カルトの崇拝者はリーダーに疑問を投げかけたりしない。私が話をした人は疑問を持っている。しかし、彼らの目には、良い面が悪い面をはるかに上回っているのだ。トランプは完璧だから愛されているのではない。欠点にもかかわらず愛されているのだ。トランプなら後ろ盾になってくれると彼らが信じているからだ。


集会が終わった。中に入れなかったためにアリーナの外で巨大スクリーンを見ていた何千人もの人々の横を通り過ぎながら、11 月の選挙でトランプが負けることはないと私は確信していた。そんなことはありえない。民主党が候補者に誰を指名しようが、トランプに打ちのめされるだろう。私の言うことを信じられないなら、彼の政治集会に参加して、自分の目で確かめてみるといい。心配しなくていい。彼らが襲ってくることはないから。


私は今日、ニューハンプシャー州の予備選挙で、ピート・ブティジェッジに投票した。ピートはこの国にとって素晴らしい働きができると心の底から思う。そして、将来的にチャンスを得ることもおそらくあるだろう。しかし、私は明日、投票者登録を民主党から無党派へと変更する。過去 20 年間支持してきた党を離れ、しばらくの間、中間地点から見守ることにする。どちらの党にも、私の居心地を悪くさせる極端な人々がいる。しかし、どちらの側であっても、ほとんどの人は善良でまともな人々であると私は基本的に信じている。どちらも、この国に最良のことを願っているが、そこに至るまでの方法について意見が大きく異なるだけだ。しかし、両者がお互いを人間だと認め始めるまで、分断に橋が架かることはないだろう。これ以上の分断に力を貸すことを私は拒む。投票先が異なるからといって、会ったこともない人を憎むことを私は拒む。この国を癒すつもりがあるなら、歩み去るのではなく、歩み寄る姿勢を見せ始めなければならない。


この 11 月、民主党支持者は手痛い一撃をくらうことになるだろう。選挙結果に大きな衝撃を受けるだろう。なぜなら、彼らは世の中の現実を反映していないエコー・チェンバーの中で暮らしているからだ。それが警鐘になればいいと思う。鏡の中を見つめ、どうしてこんなことになってしまったのか自問自答するきっかけになればいいと思う。そうすれば、彼らは人の話を聞き始めるかもしれない。その可能性はどちらかといえば低いと思うがが、希望を持つことは悪くない。

(翻訳ここまで)


この記事がかなり話題となったこともあり、ボリセンコは先日、PragerU の動画に登場して、同様の趣旨のことを 5 分間ほどにまとめてしゃべりました。私が彼女の名前を知ったのも、そのときが初めてです。その動画を翻訳して Twitter にあげたところ、かなりの反応をいただきましたので、今回、この記事も訳そうと思いました。


PragerU の動画とその翻訳の書き起こしはこちらからどうぞ (スレッドになっていますので、クリックしてお読みください)。


編み物コミュニティと左派的な政治活動の組み合わせは、奇妙な組み合わせに思われるかもしれませんが、あの世界もかなり強烈なイデオロギーに支配されているようです。編み物というのは時間的な余裕がないとできない趣味ですし、教育レベルの高い中産階級以上の方々が多いと思われますので、左派/リベラル的政治傾向と親和性が高いのかもしれません。編み物クラスタ内の政治的軋轢/キャンセル・カルチャーについては、昨年、Quillette誌に3本ほど記事が出ています。

quillette.com

quillette.com

quillette.com


ボリシェンコは、2020年8月5日公開のポッドキャスト「Triggernometry」にも登場して、1時間にわたってインタビューを受けています。その動画へのリンクも貼っておきます。

www.youtube.com


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雑誌記事『カニエ・ウェスト、そして黒人保守派の未来』を訳してみた

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ラッパーのカニエ・ウェストが、大統領選挙に出馬すると宣言して話題になっています。そこで、ちょっと古い記事なのですが、彼について書かれた Quillette 誌の 2018年4月の記事を訳してみました。タイトルを『カニエ・ウェスト、そして黒人保守派の未来』といいます。

quillette.com


ウェストが、黒人女性の保守派論客でトランプ支持のキャンディス・オーウェンズに賛同したことで、大騒ぎになったころの記事です。


リベラル・エリートは、なぜそれほどまでに黒人の保守派を脅威に感じ、その声を無視しようとするのか、についてです。


記事を書いたコールマン・ヒューズは、このときまだコロンビア大学の学生。記事の翻訳のあとに、彼の簡単な紹介文も書きました。


(翻訳ここから)
カニエ・ウェスト、そして黒人保守派の未来
2018年4月24日
文: コールマン・ヒューズ

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(2018年) 4 月 21 日、カニエ・ウェストは 1,340 万人のフォロワーに向けて、次のようにツイートした。「キャンディス・オーウェンズの考え方はいいね」。有名人がお気に入りの政治コメンテーターへの支持を表明するのは、まったく珍しいことではない。しかし、空前絶後の知名度を誇るラッパーが、黒人でトランプ支持の熱狂的な旗振り役であるオーウェンズのような人物への支持を表明するのは、人生に一度あるかないかの出来事だ。オーウェンズは、ブラック・ライヴズ・マターやフェミニズムをはじめ、左派が推進するその他のさまざまな理念を批判している。また、共和党の路線を全面的に支持しているわけではないが、減税や個人の責任の重視など、伝統的な右派の価値の多くに賛同している。

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彼女のメッセージの核心にあるのは、「黒人は白人のレイシズムに絶えず晒されている」というナラティブを後生大事に抱え込んで離さない傾向が白人にも黒人にもあるという指摘だ。私たちが必要としているのは、ブラック・アメリカの可能性についての新しいストーリーであり、それはすなわち、醜い過去にしがみつくのではなく、明るい未来を見据えることだ、というのがオーウェンズの主張である。自身の将来について壮大なビジョンを想い描き、自分は現代のシェイクスピアだと考えているウェストが、現代的な抑圧のシステムにより過去のあからさまな不正義が繰り返されており、それによって黒人の可能性が制約されているのだとする左派の支配的な見方よりも、黒人の自己創造というオーウェンズのメッセージを好んだのは容易に理解できる。


ウェストがトランプ支持を表明したときと同様に (後に支持を撤回した)、オーウェンズに対するウェストの支持は、左派よりも右派に好意的に迎え入れられた。数は少なくなりつつあるとはいえ、この国の筋金入りの反黒人差別主義者は共和党に投票する傾向があるにしても、保守主義は原則としてレイシズムにはまったく関係がない証拠だとして、保守派メディアは黒人保守派に飛びついた。対照的に、リベラル・メディアや左翼メディアは、黒人保守派を無視し、彼らが存在しないかのように振舞うことに全力を尽くした。人種の問題について道徳性を独占しているのは左派だというナラティブが乱されると困るからだ。カニエ・ウェストがラッパーであり、黒人のアイコンであることは、本来なら左派に分類される「べき」資質なのだが、それだからこそ彼が保守主義を好むという事実がいっそうの破壊力を持つのだ。


しかし、黒人の保守主義に蓋をし、黒人は声を揃えて左派の意見に同意しているのだと言い募る左派の戦略は、現実離れしているので永遠に続くことはない。さまざまな人種関連の問題についてどう思うか黒人に聞いたとき、その答えはリベラルの原理原則とは異なる場合も多い。たとえば、「教育レベルの高くない黒人の成功を妨げているのはレイシズムではない」と白人が言えば、この人物は構造的な不正義について嘆かわしいほど無知であると左派は考えるだろう。しかし、2016年のピュー・リサーチ・センターの調査によれば、大学を出ていない黒人の 60% が、彼らの肌の色は成功のチャンスに影響は与えなかったと考えている。もし白人が「ラップ・ミュージックは社会に悪い影響を与えている」と言えば、この人物は潜在意識として偏見を持っていると左派の多くが考えるだろう。しかし、2008 年のピュー・リサーチ・センターの調査によれば、黒人の 71% がこの意見に同意する。


さらに、ほとんどの黒人はマイクロアグレッション (訳注: 本人は自覚していないちょっとした差別的言動) を気にしていない。2017 年のケイトー・インスティチュートの調査によれば、黒人の回答者の半数以上は、「あなたは自分の考えをはっきり伝えることができますね」(訳注: 黒人は一般的にそうすることができないと言っているようにもとれる) 「私は他人の人種を気にしない」「この社会では、懸命に努力すれば誰もが成功できる」「アメリカはメルティング・ポットだ」などの言葉を不快に感じていない。だが、進歩派は、マイノリティを守るという名目で、こうした言葉は無神経であると鋭く批判する。どうやらマイノリティのほとんどが気にしていないにもかかわらずだ。


黒人は「進歩的な」政策と親和性があるという見方も、多くの黒人が民主党に投票することを考えれば理解はできるものの、同様に間違っている。アファーマティブ・アクションが良い例だ。この政策は、左派の間では何十年にもわたって批判されることがほぼなかったが、黒人の間ではそれほど意見が一致しているわけではない。2016 年のギャラップ社の調査によれば、大学の入学プロセスにおいて、人種/民族性は「一切考慮されるべきではない」と、黒人の 57% が考えている。既に 2001 年の段階でも、ワシントン・ポスト紙による同様の調査において、優遇政策の目標が「マイノリティにより多くの機会を与えること」であったとしても、採用や入学は「人種や民族性ではなく、厳格に能力や資格に基づいて」決定されるべきである、と 86% の黒人が考えていることがわかっている。


黒人コミュニティの大多数の考え方が正しいかどうかは別の問題だ。しかし、白人リベラル層の多くが支持も許しもしないであろうこうした考え方が、黒人の間では非常に一般的であることについては疑いの余地がない。さらに困ったことに、人種的な優遇措置は実際には黒人の生徒に害を与えているという無視できない証拠について、多くの進歩派は興味を抱いていないか、気付いていないように見える。スタンフォード大学で法律を教えるリチャード・サンダー教授は、アファーマティブ・アクションは黒人学生の失敗のお膳立てをしていると主張する。不釣り合いな学校に入学させることを組織立って行うことで、その環境においては学問的に準備不足の黒人学生が生まれているというのだ。誠意に基づきこの証拠に反論することはかまわない。しかし、サンダーや、同様の主張をする人々が直面しているのは、左派の多くからのレイシズムという非難である。


左派は、世論調査を無視することはできるかもしれないが、カニエ・ウェストを無視するのは簡単ではない。過去には、左派は、支配的な通説に異議を申し立てた黒人の有名人を無視することに成功した実績がある。たとえば、リル・ウェインが、ひざまずいて抗議するコリン・キャパニックを支持しなかったとき。デンゼル・ワシントンが、黒人の受刑率が高いのは、「システム」のせいではなく、父親のいない家庭のせいだと論じたとき。モーガン・フリーマンが、レイシズムはもはや問題ではないと主張したとき。こうした考え方に真剣に取り組めば、それを認めることになる。そしてそれは、左派の考え方のみが、レイシズムに反対する者が持つことができる唯一の考え方あるという神話を脅かすことになる。こうした有名人を単に無視するか、裏切り者、変人、巨万の富に頭をやられた無知な人間だという理由で相手にしないほうがずっと簡単だ。ウェストの評判を落とすために、これからどのような戦術が使われるのかはわからない。しかし、ウェストがテレビの生放送で「ジョージ・ブッシュは黒人になんか関心がない」とブチあげたのは有名な話だ。そんな男を簡単に黙らせることができると進歩派が考えているなら、彼らはおそらく間違っている。

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左派は、人種的正義の問題に関する彼らの独占を守るために、レイシズムという非難を頻繁に用いる。ペンシルバニア大学で法律を教えるエイミー・ワックス教授に最近起きたことを見ればわかるとおり (訳注)、反対意見を唱える者が白人なら、その非難は正当だとみなされる可能性が高い。だからこそ、オーウェンズのような黒人の保守派は彼らにとって大きな脅威なのだ。彼らが存在するという事実だけで、反対意見にタブーを押し付ける左派のパワーが乱されてしまう。シェルビー・スティールやトーマス・ソウルなどの著名な黒人保守派が、あからさまなレイシズムの時代に育ち、1960 年代を活動家/マルクス主義者として過ごした後、保守主義に立場を変えたという事実は、保守主義は白人至上主義の巨大な隠れ蓑であるというイメージは誤りであることを示している。こうした黒人保守派の存在が、レイシズムについて保守派が無罪であることの証明にならないというなら、次のデータを検討してみてほしい。2016 年にワシントン・ポスト紙に掲載されたセオドア・R・ジョンソンの分析によれば、アメリカの黒人の 45% が自身を保守派だと認識している。それに対して、リベラル派と自認するのは 47% である。また、一般的に言って、黒人は白人に比べて宗教に熱心である。

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(訳注: ペンシルベニア大のロー・スクールで教鞭をとるワックスは、彼女の教えるクラスで「成績上位4分の1に黒人学生が入ったことはなく、上位半分に入ることもまれである」等と発言し、レイシストと非難された。大学側は、1年生のカリキュラムから彼女を外し、選択科目だけを担当するようにした)


しかし、保守的な黒人とリベラル派の黒人に数の上での大きな差がないなら、なぜ彼らは大挙して民主党に投票するのか? ジョンソンはこう指摘する。「1960年にケネディが黒人票の 68% を得て以来、民主党の大統領候補が獲得した黒人票が 82% を下回ったことはない」「バラク・オバマの再選時には 93% の黒人が彼に票を入れた」。ジョンソンの研究が示唆するのは、黒人がリベラルの政策を好んでいるのではないということだ。「2 人の候補がいて、まったく同じ政治的立場を持ち、まったく同じ社会的条件のもとで立候補した場合でも、黒人は共和党候補よりも民主党候補を好む」 (強調は筆者)。ジョンソンは、黒人が民主党に忠誠心を示す本当の理由は、民主党は公民権法を推進したが、共和党は推進しなかったという一般的な認識にあるのではないかと疑っている。


しかし、民主党がエイブラハム・リンカーンの党よりも公民権に関して高い実績を持っているという考えは、控えめに言っても疑わしい。社会学者のムサ・アルガービが指摘するように、公民権法を実際に施行したのは共和党のドワイト・アイゼンハワーであり、彼の前任者である民主党のハリー・トルーマンはほとんど何もできなかった。ロナルド・レーガンの対薬物戦争は大きな非難を浴びたが、ビル・クリントンの犯罪防止法も非常に評判が悪い。それにもかかわらず、1960 年代にリンドン・ジョンソンが広範囲の公民権法を成立させたことから、民主党はこれまでずっと善人だったという印象が生まれた。過去 50 年間のすべての大統領選挙において大多数の黒人票を獲得するにはそれだけで十分だったのだ。


トランプの時代において、リベラルのエリートたちがアメリカの一般的な白人から乖離しているという事実についてはさまざまな場所で書かれるようになった。しかし、リベラルのエリートたちがアメリカの一般的な黒人から乖離しているという事実にはあまり注意は払われていない。また、こうしたエリートたちが、何百万もの黒人が抱く意見を、よくても「支持されてない」、悪くすれば「レイシスト」と表現する事実について払われる注意はさらに少ない。カニエ・ウェストの知名度を考えれば、歯に衣着せぬ彼の物言いが、人種や社会政策の議論にまつわるリベラル派のタブーを壊す力になればと人々が望むのも無理はない。しかし、こうした作られたタブーはリベラル派エリートの見識の構造に深く埋め込まれているので、戦いなくして壊れ去る可能性は低い。しかし、ウェストのような人々が何度も何度もそのタブーを壊していけば、再燃するレイシズムに対する最後の防波堤であり、反レイシズムを真剣に考える人の唯一のオプションであるという左派のセルフイメージが、静かに不同意を表明する何百万もの黒人アメリカ人の重みに耐えかねて崩壊するのも時間の問題だろう。

(翻訳ここまで)


この記事を書いたコールマン・ヒューズは、この記事を書いた2018年の時点では、コロンビア大学の哲学専攻の学部生でした。コロンビア大学の学生新聞であるコロンビア・スペクテーター紙や、ヘテロドックス・アカデミーという非営利団体のブログに既に記事を書いていました。


現在は、City Journal 誌やオーストラリアの Quillette 誌に寄稿するほか、自身のポッドキャスト「Conversations with Coleman」を主宰しています。最近は、ブラック・ライヴズ・マターに懐疑的または批判的な立場から、さまざまなポッドキャストにゲスト出演しています。


その中から2つほどリンクを貼っておきます。TRIGGERnometry と UnHerd のポッドキャストです。

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中国が新型コロナウイルスに関連して非常に否定的な論調で語られている - 英国のポッドキャスト番組から

ちょっと古い話になってしまうのだが、先月、新型コロナウイルス関連のポッドキャスト動画をYouTubeで見ていた。その中で、識者 (学者やジャーナリスト) が中国に対して非常に否定的な見解をあからさまに述べる動画がいくつもあったので3つほどご紹介します。


地上波や新聞などのメインストリーム・メディアでは、ここまではっきりと中国に否定的な論調が出てくることは (私の見る限り) あまりない。


まず、UnHerdという英国のオンライン・マガジンのポッドキャスト。インタビューに答えるのは、ニール・ファーガソン (Niall Ferguson) という英国出身で米国在住の歴史学者。政治的には保守。コロナウイルス感染症について英国政府に助言した公衆衛生研究者のニール・ファーガソン (Neil Ferguson) とは別人。5/20公開の動画。


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25:07 あたりから。「アメリカは終わりだとか、これからはアジアの世紀だとかいう文章が毎日のようにリリースされる。しかし、こうした記事は結論を急ぎすぎている。中国で作られたウイルスによって非常に深刻な制度上の問題が発生したが、それを見ていないからだ。今年の中国の経済成長は彼らの予想を大きく下回るだろう。こうした衝撃を受けて、安定した体制が保たれるかどうかはわからない」


次は、TRIGGERnometry。デビッド・マクウイリアムズというアイルランド人経済学者がインタビューに答えている。この人はメディアにもよく登場するので、アイルランドでは知らない人がいないと言っていいほどの有名人。政治的には中道左派と自分で言っている。5月6日公開の動画。


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動画の35分ぐらいから45分すぎぐらいまで、マクウイリアムスはサプライチェーンの一方の端を中国に置くことのリスクに欧米の国々や企業が気付いてしまった、という話をしている。


(37:43)「長期的な視点で新型コロナが中国に与える影響を考えた場合、UK、ドイツ、フランス、米国などどの国も、基本的な装備を中国に頼ることは今後はけっしてしないだろう」


最後もTRIGGERnometryから。ゲストは英国人ジャーナリストのダグラス・マレー(以下DM)。彼が中国について話しているところをざっと翻訳してみた。46:25ぐらいから。司会はコンスタンティン・キシン(KK)とフランシス・フォスター(FF)。2人とも英国のコメディアン。


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(翻訳ここから)

FF: 中国の話をしよう。コロナの件、中国というか中国共産党(CCP)はどのくらい責任を負うべきと思うか?


DM: 市場からか研究所からか、事故なのか故意なのか、どのシナリオでもCCPはその責任をとらないといけない。ウイルスが中国で発生したからだけでなく、何か月にもわたって世界を騙したからだ。そして、全体主義政権がいつもやることを行った。つまり、現地の災害を世界的なものに変えたのだ。世界経済を焼き尽くした中国の政権との関係を見直すためのとても複雑だが必要なプロセスが私たちを待っている。


KK: 賠償金が必要だと思うか?


DM: もちろん、あらゆる可能性を排除せずに検討すべきだ。私たちの同盟国や友好国はCCPにひどい扱いを受けている。中国は豪州政府をいじめている。


KK: この件はあまり知られていない。


DM: 過去にも書いたが、UKはCCPについてあまりにも考えが甘かった。おそらく金(きん)の蛇口としか見ていなかった。


この話は7年前に信頼できる筋から聞いたんだが、キャメロン首相(当時)がダライ・ラマと会談した後、CCPはUKとの新しい投資に関する貿易関係を打ち切った。キャメロンがダライ・ラマと距離を取る、二度と会わないとアナウンスし、ひどくこびへつらった謝罪を表明した後、UKの代表団が北京を訪れた。


中国代表団はテーブルの向こうから英国政府の謝罪文のコピーをUK代表団に渡し、立ち上がって読むようにと言った。で、UK代表団は言われたとおりにした。着席するとCCPの担当者は笑顔を浮かべ、本気かどうか知りたかったんだ、と言った。


KK: わお。


DM: この話を聞いたとき、私、というか英国民を代表して、それほど卑屈になるヤツがいるのかとひどく驚いたのだが、しかし、私たちは我慢することを選んだのだ。金や投資が欲しければ(金や投資が重要でないとは言わないが)、彼らのルールでプレイしなければいけないと。


ここ数週間、オーストラリア政府は同様の体験をしている。これは強調しておきたいが、UKがいま学んでいることを、彼らはUKより先に、より速いスピードで学んでいる。それは、地理的に近いことと、ここ数十年の貿易関係から。豪州を訪れたときに感じたが、一般の豪州人は、中国との関係には何かが付随してくるという事実を、英国人や米国人よりはるかに意識している。2~3週間前、豪州政府は、ウイルスがどこで発生してどう広まったかについて、独立した国際的な公式調査を行ってはどうかと示唆した。豪州政府がそう示唆した後、CCPはいつもと同じような反応を示した。豪州を脅したのだ。


在豪の中国外交官や大使は、中国は豪州の製品、牛肉、ワインの購入をやめる可能性があると言った。これは人種差別のようだと言った。ある著名な中国政府の御用記者は、「豪州は中国の靴の裏にくっついたチューインガムだ。削り落とさないといけない」とWeiboに投稿した。これは、CCP高官の典型的なものの言い方だ。


KK: それこそレイシストのように聞こえるね。


DM: おもしろいことに、ナンシー・ペロシやその仲間たちは、ウイルスがどこで発生したか言うのは人種差別なのではないかと心配していた。2月の終わりか3月のはじめになっても、連帯を示すために地元のチャイナタウンに行くことをペロシは奨励していた。フィレンチェ市長は、中国人を見つけてハグしようと市民に呼び掛けていた。レイシズムとコロナウイルスを同時に撃退するためにだ。それが、フィレンチェがどこよりも早くロックダウンに入った理由かもしれない。


ウイルスが中国から来たと言うことが人種差別かどうかを私たちが懸念しているというのに、中国は世界のあらゆる人に対して好きなだけレイシストとしてふるまう。これこそ、私たちの愚かさが現実にぶちあたった典型的な例だ。現実の中国は、レイシズムのことなどこれっぽちも気にしない。しかし、私たちが気にすることを彼らは知っている。そして、私たちについて何でも好きなことを言い、私たちの恐怖を巧みに操る。


話を戻すと、豪州は中国に製品をボイコットされようとしている。よくも中国に歯向かったな、よくもウイルスの起源について独立した国際的な調査を行うことを示唆したな。そんなことをしたらどうなるか教えてやる、というわけだ。今こそ連帯のときだ。ニュージーランドが私たちの友人で同盟国の豪州の支持を表明したことを嬉しく思う。


今こそ民主的な連帯のときだと思うし、私たちの同盟国をいじめておいて、私たちがその同盟国から距離を置くなどと思うなよ、とCCPに言うべきときだと思う。コロナウイルス騒動の後、中国についてはすべてをテーブルに載せて検討すべきだと思う。

(翻訳ここまで)

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