大手メディアはどのように虚偽の人種差別事件を報道するにいたったか

 

バリ・ワイスが主宰している「コモンセンス」というアメリカのオンライン・マガジンに興味深い記事が掲載されていたのでご紹介します。記事を書いたのはジェシー・シンガル記者。

 

www.commonsense.news

 

2022年8月、米国デューク大の女子バレーボール・チームがブリガム・ヤング大(BYU)に遠征して試合を行った。そこで、スターティング・メンバーの中で唯一の黒人だったレイチェル・リチャードソン選手がBYU応援団から人種差別の罵声を執拗に浴びせられたという。

 

試合後に彼女はこの件を自分のゴッドマザー(名付け親)に話した。たまたま法曹界の要人だったこのゴッドマザーがTwitterに投稿。たちまち18.5万件の"いいね"が集まり、多くの人が事件を知ることなった。リチャードソンの父親が娘にかわってさまざまなメディアのインタビューに応じ、NYタイムズ、ワシントンポスト、CNN、スポーツイラストレーテッド誌などが記事にした。

 

BYUも素早く対応した。事件を遺憾とする声明を出したほか、罵声を浴びせたとする男 (BYUの学生ではない) を特定し、大学スポーツ競技場への一切の出入りを禁止した。また、南カロライナ大はBYUとのバスケの試合をキャンセルし、BYUで行われる予定だったデューク大とライダー大の女子バレーの試合は会場が変更された。

 

とんでもない人種差別の事件なのだが、さて、ここでの問題は何か、レイチェル・リチャードソンが人種差別の罵声を浴びせられたという事実はなかったのである。観客の多くが手にしていたスマートフォンにも、公式記録用のビデオにも罵声は1つもとらえられていなかったのだ。

 

リチャードソンの黒人のチームメートを含め、選手からも観客からも罵声を聞いたという証言は出てこなかった。NYタイムズなどの大手メディアの記者たちは、リチャードソンと彼女のゴッドマザーや父親の話をそのまま信じ込み、裏もとらずに記事にしてしまったのだ。

 

まともなジャーナリズムを実践したのは、たとえば地方紙のソルトレーク・トリビューンだ。同紙は出入り禁止になった男はほんとうに罵声を浴びせていたのかと疑問を呈した。そして、そのような事実は監視カメラには映っておらず、罵声を聞いたと証言する者も全く名乗り出ていないという回答を警察から引き出した。

 

BYUの学生新聞であるクーガー・クロニクル紙は、体育会事務局の関係者や当日現場にいた何人もの観客に取材したが、罵声の証拠はまったく見つからなかった。また、出入り禁止になった男は精神薄弱者で、大騒ぎする人々をなだめるために罰せられたのだという体育会事務局関係者の話も掲載した。

 

先週の金曜になって、BYUは新しい声明を発表した。あの夜の試合について、数多くの動画を確認し、50人を超える観客に話を聞くなど、徹底的な調査をしたが、人種差別的な罵声は1つも確認できなかったというのだ。無実の罪に問われた男に対する処分も取り消された。

 

しかし、NYタイムズの往生際は悪かった。最新の記事では「リチャードソンの話と調査結果がなぜ矛盾するのかについてBYUは直接的に答えていない」と、この事件は未解決だと主張している。そして、この記事は、BYUがモルモン教の大学であり、黒人生徒は1%に満たないという、事件とは直接関係のない話で締めくくられている。

 

社会正義を推進するためには客観的な報道や事実に基づく報道など二の次であるという大手左派メディアは、ジャシー・スモレットの犯罪的詐欺話を信じ込んだり、コビントン高校の生徒を不当に追及して多額の賠償金を支払わされたわけだが、今回も懲りずに醜態をさらしてしまった。

 

リチャードソンがなぜ罵声を浴びせられ続けたと思い込んだかについては、この記事には書かれていない。BYUのチームに Nik または Nikki と呼ばれる選手がいて、この選手に対する応援の声をいわゆる N ワードと聞き間違えたのではないかという説が出ている。

 

 

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